CAFC判決

CAFC判決

Trudell Medical International Inc. 対 D R Burton Healthcare, LLC 事件

CAFC, No. 23-1777 (February 7, 2025)

この事件でCAFCは、迅速審理を理由にディスカバリー終了後に提出された専門家証言を証拠として認めた地裁判決を、裁量の濫用であるとして破棄・差し戻した。

Trudellは自発呼吸のある患者に呼気陽圧療法を行う振動呼気陽圧療法(OPEP)器具に関する特許(9,808,588)の特許権者である。

Trudell は、D R Burton Healthcareの複数の製品が588特許を侵害する容疑で連邦地裁に提訴した。地裁は迅速審理を行うため、予定していたディスカバリー日程を前倒し、専門家証言の聴取が始まる前にディスカバリー手続きを終了した。

Trudellは、重要な争点がなく事案を法律問題として判断できるとして略式判決を求めた。それに対し被告のD R Burtonは、被告の非侵害理由を述べた宣誓供述書を提出し、重要な事実問題が解決していないとして略式判決に反対した。この宣誓供述書は専門家Dr. John Collinsの証言によるもので、ディスカバリー手続きの終了後に作成されたものであった。地裁は、Dr. John Collinsの宣誓供述書を証拠として受理し、重要な事実問題が残っているとして略式判決の請求を退けた。

Trudellは、Dr. John Collinsの宣誓供述書がクレームの文言解釈について定めた地裁のガイドラインに沿っていないので正式な証拠にはならないと主張したが、地裁はその主張を受け入れなかった。陪審はトライアルで588特許のクレームの有効性を認めたが、特許侵害については認定しなかった。そのため、Trudellは、侵害の認否は陪審ではなく裁判官が行うべきであるとするモーションを提出した。しかし、地裁はそのモーションを退けた。Trudellはモーション棄却を不服としてCAFCに控訴した。

CAFCは、ディスカバリーの期間外に聴取・作成された宣誓供述書をトライアルの証拠として採用したのは地裁の裁量の濫用にあたり、民訴法の規定に反すると認定した。また、クレーム解釈についての地裁のガイドラインに沿わない供述書は証拠法の観点から採用すべきでないと指摘した。結果として、陪審の認定を破棄し、Dr. Collinsの非侵害の供述書を証拠から排除して改めて審理を行うよう地裁に差戻した。

(コメント:差戻審では、陪審がDr. John Collinsの先生供述書を除く証拠に基づいて侵害の有無を判断することになるが、CAFCは、判決理由の中で提出された他の証拠に基づくならば陪審は特許の非侵害を合理的に認定できると述べているので、差戻審はCAFCの非侵害の結論を尊重することになろう。)