CAFC判決

CAFC判決

VLSI Technology LLC 対 Intel Corp. 事件

CAFC, No. 2022-1906 (December 4, 2023)

この事件では、CAFCは、判決理由の誤りではなく、より正確な事実審理をやり直すようにという理由により差し戻した。一審のテキサス西部地区連邦地裁は、迅速審理やホームタウンデシジョンが出る裁判所として知られている。複雑な要素を比較考量する必要があるにもかかわらず、連邦地裁が結論を導いたような印象を与える事件である。

ライセンス契約の存在や損害賠償の算定など、侵害・損害賠償の認定に直接かかわるモーションを退けた地裁判決を破棄し、改めて精査するように地裁に差戻した事案

VLSI Technology(以下「VLSI社」)は、マイクロプロセッサに使用されるメモリ技術に関する特許7,523,373(以下「373特許」)、特許7,725,759(以下「759特許」)を保有する。VLSI社はIntelを2件の特許の侵害でテキサス州西部地区連邦地裁に提訴し、裁判の結果、陪審は2件の特許の侵害を認定し、それぞれに個別の損害賠償を与えた。Intelは公判前に当該特許のライセンスを得ているとの抗弁(ライセンス抗弁)を理由とするモーションを提出したが申立のタイミングが遅いとして退けられた。また、裁判終了後にその他の争点についてモーションを提出したが連邦地裁はそれについても棄却した。Intelは連邦地裁の判決を不服として控訴した。

CAFCは侵害認定の争点について、373特許については連邦地裁の認定を支持したが、損害賠償命令についてはそれを破棄し審理をやり直すよう連邦地裁に差戻した。759特許については侵害認定を破棄した。また、ライセンス抗弁についてのIntelのモーションを退けた判断も破棄した。

損害賠償命令の破棄の理由についてCAFCは次のように説明した。VLSI社の損害賠償額はIntelの侵害が寄与したincremental technical benefit法により算定されているが、その根拠となったVLSI社の専門家証言のデータを見直す必要がある。例えば、証拠として提出されたデータはIntelのマイクロプロセッサ6台を使用した実験で得られたものとされるが、そのうち4台は373特許を侵害していないモデルである。これは、侵害する機能の使用の電力削減の計算としての結果の信頼性を損なうものである。ライセンス抗弁については、VLSI社を支配下に収めるFinjan Software, Inc.からFinjan Patentsのライセンスを2012年11月に受けており、ライセンスの抗弁の却下を取り消し、このライセンスと本件訴訟の関係を審理し直す必要がある。