CAFC判決

CAFC判決

VitaMix Corp. 対 Basic Holding, Inc., et al.事件

Nos. 2008-1479, 1517,2009,12,16-Sep-09

この事件において裁判の両当事者は、幾つかの略式判決の申し立てを提出し、地方裁判所は、各申し立ての抗弁者側の主張を認める略式判決を下しました。CAFCは、控訴審において、直接侵害不成立と判断した地裁判決を破棄して事件を差し戻しましたが、他の判決については支持しました。この判決においてCAFCは、重要事実の真正な争点の存在を規定し、略式判決を破棄する証拠の基準を示しました。

ユーザの用途によって特許権の侵害を構成する場合と構成しない場合がある侵害被疑品が審査過程で意識的に除外されているか否かについて

米国特許第5,302,021号(以下、021特許)の特許権を所有するビタミックス(VitaMix Corporation)は、競合するブレンダー製造会社であるベーシック(Basic Holding, Inc.)を、021特許の特許権直接侵害、寄与侵害、及び侵害の誘発行為で提訴した。

ベーシックは、021特許が新規性なし、自明性、実施不可能を理由に無効であり、さらに審査段階における不公正行為により権利行使不能であると反訴した。さらにベーシックは衡平法上のラッチェス(懈怠)の抗弁をした。

オハイオ州北部地区地方裁判所は、それぞれの主張に対する抗弁者側の主張を認める略式判決を下した。これに対し、ビタミックスとベーシック両社が控訴した。

ビタミックスが主張したクレームは、内容物を攪拌するときに空洞部分を形成する風洞の発生を阻害するために、調理用ブレンダー本体にプランジャーを挿入することによって、調理用ブレンダーの動翼の周囲に空洞部分が形成されることを防ぐ方法である。

クレーム解釈については控訴されなかったが、CAFCは、地方裁判所が矛盾したクレーム解釈をしたとするビタミックスの主張に基づく争点について審理した。

マークマン・ヒアリングにおいて、地方裁判所は、審査の過程において、空洞部分が形成され始めたときに、空洞部分を壊す、あるいは除去する目的でかき回すためにプランジャー(注)を用いることを、出願人は明示的に放棄したと認定した。

したがって、地方裁判所は、クレームされた方法は、「空洞部分が形成され始めた後で、空洞部分を分散、除去、あるいは壊すためにかき回す」ことを除外していると解釈した。

しかしながら、地方裁判所がベーシックの非侵害の確認を認める上で、特許権者が「全てのかき混ぜる行為」を放棄したことに依拠したことで、侵害被疑者のかき混ぜ方法はクレームを侵害しないことになってしまった。

CAFCは、地方裁判所がそのように裁定したことにより、事実上、二次的な矛盾したクレーム解釈をしたと述べ、ビタミックスの主張に同意した。CAFCは、元々のクレーム解釈が正しかったと判断した。

CAFCは次に、侵害の問題について審理した。両者共、ベーシックの侵害被疑品のブレンダーが、侵害もしくは非侵害の方法で使用できるという事実については争っていなかった。

攪拌棒をかき混ぜる目的ではなく、風洞をブロックするために使用する場合、侵害を構成する使用となる。しかしながら、ユーザが攪拌棒をかき混ぜる目的で使用する場合は非侵害の用途となる。

CAFCは、通常の操作における、攪拌棒でかき混ぜるのではなく、ブレンダーに挿入する行為は、必然的に侵害行為である、というビタミックスの専門家証言を引用し、地方裁判所による直接侵害なしの略式判決を破棄した。

かき混ぜずにその侵害被疑品を使用したベーシックの宣伝ビデオを見た一部の顧客は、同様にかき混ぜずに攪拌棒を挿入するという、証言について考慮すると、この証言は略式判決において勝つ十分な証拠になる、と判断した。

直接侵害を構成しないと認定した地方裁判所は、侵害誘発及び寄与侵害も構成しないとの略式判決を下していた。

CAFCは、直接侵害の争点については地方裁判所の判決を破棄して差し戻したが、それ以外の理由に関するこれらの判決については支持した。

CAFCはまた、攪拌棒を使ってかき混ぜるという、実質的な非侵害の用途に基づく、寄与侵害なしの略式判決を支持した。攪拌棒及びその部品は、侵害被疑品のブレンダーにとって追加の分離可能な特徴ではなく、むしろ重要な決定的特徴であることから、ベーシックは法律問題としての判決を求める資格があると判断したのである。

CAFCはさらに、ベーシックが顧客による侵害行為を意図したという証拠がないことから、侵害誘発なしの略式判決を支持した。製品資料、写真、広告は全て、風洞を阻害する目的ではなく、かき混ぜる目的で攪拌棒を使用することを勧めていた。

CAFCは、地方裁判所が、ベーシックによる特許無効の略式判決の申し立てに不備があったことを理由に、ビタミックスによる特許有効の略式判決の申し立てを認めたのは不適切であると判断した。

CAFCは2つの申し立ては相容れないものであり、ベーシックはその反対の申し立てにおいて (ビタミックスの)略式判決の申し立てを退けるに十分な、新規性欠如・自明性・実施可能性欠如という重要事実に関する真正な争点を提示していたと説明した。

次にCAFCは、意図の欠如により、不公正行為はなかったとの略式判決を支持した。発明者は、結果的に審査の過程において特許庁に虚偽の陳述をしてしまったことになるが、発明者の証言に反論する者はなく、彼がそれを真実であると信じていたことが証明された。他には騙す意図の証拠はなかった。

CAFCは、さらに、ビタミックスの遅延が不当であったという証拠も、ベーシックが損害を受けた証拠もなかったことから、懈怠なしとした略式判決は適切であったと認定した。

ビタミックス事件におけるCAFC判決は、略式判決における多くの争点の挙証責任に関して有益である。この判決は、方法特許の権利者や、特許権侵害の用途に使用可能な製品の製造者にとって特に重要である。