CAFC判決

CAFC判決

United States 対 Arthrex Inc. 他 事件

Supreme Court No. 19-1434,2021,6,21-Jun-21

この事件では、PTAB(米国特許庁審判部)の審判官の任命権限を特許庁長官が持つかどうかが争われたが、最高裁がこれを肯定することで、PTABの任命権に絡む一連の争いに終止符を打った。

商務長官が任命したPTABの審判官が特許の有効・無効を最終的に決定することは憲法に何ら反しないとした判決

Arthrexは、縫合痕を残さない固定アッセンブリに関する特許(9,179,907)の特許権者である。Smith & Nephewはこの特許のIPRを申請し、PTOは一部クレームを無効と決定した。Arthrexはその決定を不服としてCAFCに控訴し、特許法の規定(第6条(a)=商務長官がPTO長官と協議して特許審判官を指名する)が憲法の規定(=大統領は・・・法律によって設置されるすべての合衆国官吏(officer)を指名し、・・・任命する)に違反すると主張した。CAFCは、再審査に関するPTO長官の権限や審判官の解任権限などを考慮した上で、PTABの審判官は憲法で定めるprincipal officer(上級官吏)にあたると認定し、PTO長官がその指名を行うのは憲法の任命規定に違反すると判決した。CAFCは、事案をPTABに差し戻し、新しく適正な手続きで審判官を任命し直すよう命じた(Arthrex, Inc. v. Smith & Nephews, Inc., Fed. Cir., Oct. 31, 2019)。この判決に対して、米国政府(USPTO)と両当事者が最高裁に上告した。

最高裁はCAFC判決を破棄し、事案をCAFCに差し戻した。最高裁は、商務長官が任命したPTABの審判官が特許権の最終的な効力を判定することは憲法の規定に何ら違反しない、問題なのはPTABの決定について、行政機関の長であるPTO長官がそれの見直し(review)をできないことであると判示した。