CAFC判決

CAFC判決

Unicolors 対 Hennes & Mauritz事件

Supreme Court No. 20-915,2022,2,24-Feb-22

アメリカを本国とする著作権の行使には米国著作権局への登録が必要である。登録に誤りがあれば今まではその登録を無効にしていたが、この判決は登録に誤りがあったとしても、悪意ではない場合は著作権登録を無効にせずに過誤登録を救済した。

アメリカを本国とする著作権を行使するためには、米国著作権局への著作権の登録が必要となる。登録の申請書に誤りがあったとしても、申請者がその誤りに気付いていない場合には、著作権法は著作権登録を無効にしない(著作権法法411条(b))。

Unicolorsは、衣料品メーカー向けのアートワークの開発会社で、ファブリック・デザインに関する著作権を所有する。自社開発した31件のデザインについて、1件の登録申請書で著作権登録を2011年におこなった

Hennes & Mauritz (H&M)は全米に小売店網をもつ衣料品会社である。H&Mが販売した衣料品がファブリック・デザインに類似するとして、H&Mは著作権侵害訴訟を提起した。地裁の陪審は、H&Mの著作権侵害を認め、 H&Mへの損害賠償と弁護士費用の支払いを認めた。H&Mは、Unicolorsの登録申請書に不正確な記載があるので、陪審ではなく裁判官が法律問題として判断すべきであるとのモーション(JMOL)を申し立てた。地裁はそれを認めず、Unicolors勝訴の判決を下した。H&Mはこの地裁判決を不服として第9巡回区控訴裁判所に控訴した。

控訴審でH&Mは、著作権登録されたUnicolorsの31件のファブリック・デザインのうち、一部は特定顧客に限定販売されており、残りは一般大衆に販売されているとして、①単一の登録申請書ではなく別個に登録申請しなければならない、②申請書の記載が不正確であることを知りながら申請書を提出したなどを理由にして著作権登録の無効を主張した。これに対してUnicolorsは、①、②の理由の両方につき、誤りの認識がなかったとの「善意の抗弁」をおこなった。

控訴裁は次のように述べて地裁判決を破棄した。判決によれば、一つのグループとして著作権登録できるのは「まとめて」公表されたものである。登録申請書の誤記は「事実上の」誤りではなく、「法律上の」誤りである。事実上の誤りには著作権法上の救済が認められるが、法律上の誤りには認められない。したがって、登録申請者の瑕疵は、著作権登録の無効理由として十分である。この判決を不服として、Unicolorsは連邦最高裁に上告した。

最高裁は次のように述べて控訴裁判決を破棄した。著作権法411条(b)(1)は、「著作権登録証に不正確な記載があったとしても、それが不正確であると認識していない限り著作権登録は有効である」と規定する。関連判例と辞書的意味の変遷を考慮すると、「認識」とは「何かについて知っていることの事実や条件」であり、この定義に基づく限り、31件のデザインを1件の登録申請書で手続きしたことを「法律上の」誤りとして、「事実上の」誤りと区別するほどの違いはない。

(注:米国では、法律に詳しくない著作権者自らが著作権登録することが多いことから、議会は、現著作権法の改正にあたり、善意の手続上の誤りについては救済する旨の規定を盛り込んだ。本件はそのような議会の意図にそった判決である。)