契約書の意思解釈,この事件においてCAFCは、契約に文書上の誤りがあった場合、裁判所は契約当事者の意思を尊重して契約内容を判断できることを示しました。このような誤りの余地は濫用される恐れがあるため、書面上の誤りが救済されるとは限られません。実際の特許を受ける権利の譲渡、特許権者の譲渡では細かな注意が必要です。
契約書の意思解釈
中間控訴において、CAFCは、カリフォルニア州中央地区地方裁判所が出した適格欠如ゆえの却下の申立てを否定する決定を支持し、被合併会社が解散した後に特許権が被合併会社へ譲渡された場合であってもデラウェア州法人は特許権および原告適格を有すると認定した。
この事件の主な争点は、トライスター(Tri-Star)の従業者の「ソケットコンタクト」の発明を、雇用契約に従って発明者からその使用者でありオハイオ州法人であるトライスター(オハイオ州)に譲渡した際に生じた。
しかしながら、本発明の1年前に、トライスター(オハイオ州)は合併され、カリフォルニア州法人であるトライスター(カリフォルニア州)になっていた。譲渡書類には権利の譲渡先がすでに存在しない会社であるトライスター(オハイオ州)であることが明記されていた。
トライスター(カリフォルニア州)はその後に合併されて、デラウェア州法人であるトライスター(デラウェア州)になったが、カリフォルニア州法人からデラウェア州法人へのその後の特許権の移転には異議が申し立てられなかった。
トライスター(デラウェア州)は争点の特許を侵害するとしてプリシーディップ(Preci-Dip)を訴えた。プリシーディップは、存在しない団体であるトライスター(オハイオ州)へ本発明が譲渡されており、それゆえ所有権の移転は効力を生ずることはないと主張して、連邦民事訴訟規則第12条(b)(1)に基づいて原告適格欠如ゆえの却下を申し立てた。
地方裁判所は却下の申立てを否定し、中間控訴への決定を認定した。その後、プリシーディップはCAFCへ決定を控訴した。
CAFCはこの中間控訴を受理し、現在の原告であるトライスター(デラウェア州)は特許権者であると判断した。CAFCは一般契約法およびオハイオ州法に基づいてこの決定をした。
第一に、一般に契約法は当事者の相互意思を満足させることを試み、この事件では、従業者は自身の雇用契約の求めに応じて使用者へ権利を移転する意思があったことは明らかであると認定した。
第二に、オハイオ州法の下では、例えば合併の後でも、非合併会社はその所有権を授与することを可能にするために存在し続けると認定した。
これらの検討に基づいて、CAFCは被合併側のトライスター(オハイオ州)への提示された移転はその相続人のトライスター(カリフォルニア州)への移転に等しいと判断した。トライスター(デラウェア州)へのその後の移転は異議が唱えられなかったので、CAFCはデラウェア州法人がこの訴訟を提起する適格を有すると判断した。
この事件における決定は部分的に州法に基づくものの、広範な推断を有する。一方で、この決定は特許権の譲渡人および譲受人の意思を密接に注目し、実際の文書化が正しくないとしても、裁判所は当事者の意思を尊重することをいとわないことが示された。
これにより、譲渡および権利の登録に関する形式的な誤りは当事者にとって犠牲が小さくなる。しかしながら、重要な権利の適切な文書化におけるこのような余地は特許登録制度の濫用を認めることになるかもしれず、意図的に譲渡を誤登録し、一部の会社は架空会社を用いて実際の特許権者として人々を欺きさえするかもしれない。従って、実際に特許権者を譲り受ける際は、慎重になる必要がある。
Key Point?この判決は契約に文書上の誤りがあるとしても、裁判所は契約当事者の意思を尊重して契約内容を判断することをいとわないことを示した。これは濫用される恐れがあるため、書面上の誤りが救済されるとは限られない。実際の特許を受ける権利の譲渡、特許権者の譲渡では細かな注意が必要である。