CAFC判決

CAFC判決

Teva Pharmaceuticals USA, Inc. 対 Sandoz, Inc. et al., 事件

No. 13-854,2015,4,20-Jan-15

控訴審による地裁の事実認定の破棄基準に関する最高裁の指針,このテバ判決は、地裁におけるクレーム解釈のプロセスと、CAFCによる地裁のクレーム解釈のレビューに著しく影響を与えると思われる。例えば、地裁はクレーム解釈の判決の裏付けに、今後、専門家証言を含む外在証拠により頼る傾向を示す可能性がある。控訴審の段階では、地裁判決がより尊重されることになり、クレーム解釈の地裁判決を破棄するケースが減少する可能性がある。クレーム解釈に加え、テバ判決は、略式判決および不明瞭性の判断にも多少の影響を与える可能性もある。クレーム解釈における事実問題の重要性が明らかに増すことになり、テバ判決は、クレーム解釈に依存する略式判決手続きの効率性に影響を与えることが予想できる。,更に、CAFCは、不明瞭性をクレームの解釈に付随する問題として扱ってきたため、テバ判決により、CAFCは不明瞭性の審理基準を再検討する可能性もある。

控訴審による地裁の事実認定の破棄基準に関して出した最高裁の指針

本件の係争特許は、テバ(Teva Pharmaceuticals USA, Inc.およびその関連会社)が所有し、多発生硬化症治療用の薬剤、Copaxoneの製造方法に関する。薬剤の有効成分は、さまざまな大きさの分子で構成されるが、その成分について、本特許のクレームは、「5から9キロダルトンの分子量」を有すると記載している。

サンド(Sandoz, Inc.)は、Copaxoneのジェネリック医薬品を販売しようとした。それに対してテバは、サンドを特許権侵害により訴えたが、サンドは、「分子量」というクレーム文言が不明瞭であることを理由に、特許クレームは無効であると反論した。

サンドは、3つの可能な計算方法のうちのどれが「分子量」という文言が意味する計算方法であるかが特定されていないので、クレームは無効と認定されるべきであると主張した。これに対し、地裁は当事者の主張および当事者の専門家からの証拠を考慮して、サンドの主張を却下し、特許は有効であると認定した。

しかし、控訴審において、CAFCは地裁判決を破棄した。CAFCは、「分子量」というクレーム文言は不明瞭な表現であり、よって特許は無効であると判断したのである。

この結論に至る上で、CAFCはまず、覆審的判断基準(de novo standard:地裁判決を考慮せず、審理を始めからやり直すこと)に従って、地裁のクレーム解釈とその基となる事実認定を審理した。

テバは裁量上訴の申立てをし、それに対し最高裁は、地裁判決のクレーム解釈の審理において、CAFCが適用しなければならない審理基準について検討することに合意した。

最高裁は、地裁の特許クレームの解釈における付随的な事実問題をCAFCが審理する際に、米国連邦民事訴訟規則第52条(a)(6)が規定する「明らかな誤りの基準(clear error standard)」を適用すべきであると判示した。

米国連邦民事訴訟規則第52(a)(6)は、「明らかな誤り」が無い限り、上級裁判所は地裁の「事実認定」を「破棄してはならない」と規定する。最高裁は、この規定は明確であり、今回この規定に例外が適用されることはないと判断した。

さらに最高裁は、Markman対Westview Instruments, 517 U.S. 370 (1996)の最高裁判決は、この規定の例外を生ずるものではないと判断した。最高裁は、マークマン判決は、クレームの解釈は、最終的に陪審員ではなく判事が決定するものであるとしたと説明した。

しかし、最高裁は、それにも関わらず、特許等の法的文書の解釈の際に事実問題の争いが生じ得ると述べ、このような付随的な事実問題に関して下された判決の審理にあたり、この「明らかな誤り」の基準が適用されると結論付けた。

最高裁は、過去の判例と事実問題の考慮も、明らかな誤りの審理を裏付けていたと述べ、最高裁は、CAFCの設立前からの巡回裁判所による判例でも、クレームの解釈に関する事実問題は、明らかな誤りの基準に従って検討されたことに留意した。

最高裁は、地方裁判所の判事は、控訴裁判所と比較して、特許紛争における争点の具体的な技術的問題に触れる機会が多いと認めた。

最高裁は、クレーム解釈において、「事実問題」と「法的問題」を区別することは困難であるというサンドの主張を退け、控訴裁判所は、事実問題と法的問題の区別には慣れていると述べた。さらに最高裁は、事実認定と法的結論を同様に扱うCAFCの努力に伴う複雑さを強調した。

最高裁は「明らかな誤りの基準」を適用し、多数決判決によりCAFC判決を破棄し、事件を差戻した。最高裁によると、CAFCは地裁が信頼したテバの専門家の陳述を受け入れず、CAFCが地裁の正反対の判断が「明らかな誤り」であると結論せずに証拠を再考慮したのは誤りであったとした。

さらに最高裁は、特許クレームの解釈は法令の解釈とは異なると述べた。最高裁によると、法令は基本的に一般公衆に向けられたものであり、特許クレームは公衆のごく一部に向けて書かれたものである。法令は、議会の検討、および通常は一般公衆との議論を包含することを必要とし、一方、特許は特定の技術的事項に集中する私的な当事者と管理者を包含するというのがその理由だ。

トーマス判事は判決に反対意見を述べ、それにアリト判事も同意した。トーマス判事は、クレーム解釈のプロセスは、事実問題に関する判断を含まないため、覆審的判断基準を適用すべきであると主張した。

反対意見によると、特許は契約よりは法令に類似する文書である。法令に関する証拠的判断は法的問題であるため、特許クレームの解釈についても同様であるべきだと述べた。

Key Point?このテバ判決は、地裁におけるクレーム解釈のプロセスと、CAFCによる地裁のクレーム解釈のレビューに著しく影響を与えると思われる。例えば、地裁はクレーム解釈の判決の裏付けに、今後、専門家証言を含む外在証拠により頼る傾向を示す可能性がある。控訴審の段階では、地裁判決がより尊重されることになり、クレーム解釈の地裁判決を破棄するケースが減少する可能性がある。クレーム解釈に加え、テバ判決は、略式判決および不明瞭性の判断にも多少の影響を与える可能性もある。クレーム解釈における事実問題の重要性が明らかに増すことになり、テバ判決は、クレーム解釈に依存する略式判決手続きの効率性に影響を与えることが予想できる。?更に、CAFCは、不明瞭性をクレームの解釈に付随する問題として扱ってきたため、テバ判決により、CAFCは不明瞭性の審理基準を再検討する可能性もある。