CAFC判決

CAFC判決

TecSec, Inc. 対 Int’l Business Machines Corp.事件

No. 2012-1415,2013,12,2-Oct-13

複数被告の裁判から切り離された被告に対し、元の裁判で敗訴した特許権者からの争点に対する再議論を認めた事件,この事件は、地方裁判所が判決において1つ以上の根拠を提示した場合に、CAFCによる意見書無しの追認判決の主題となっていた争点に対し反論することが可能であることを明らかにした。 ある状況下において、特許権者がある争点について元の裁判で敗訴していても、その裁判から切り離された他の被告に対して、特許権者が同じ争点を再議論することが認められたことから、この判決は複数の被告人裁判における被告にとって、ややリスクを提示したように思われる。,CAFCが、地方裁判所の判決を規則第36条に基づき見解書無しで追認することを適切か否か判断する際に、この判決が影響を及ぼす可能性がある。

複数被告の裁判から切り離された被告に対し、元の裁判で敗訴した特許権者からの争点に対する再議論を認めた事件

テックセック(TecSec, Inc.)対IBM(Int’l Business Machi-nes Corp.)事件においてCAFCは、地方裁判所による先の特許非侵害の判決に意見書無しで追認した後で、特許権者に同特許のクレーム解釈を再度議論することを認めた。

テックセックは、被告のインターネット・サーバー及び関連ソフトウェア製品がテックセックの3つの特許のいくつかのクレームを侵害していると主張し特許侵害訴訟を提起した。

地方裁判所は被告のうちの一社であるIBMに対するテックセックの主張を切り離し、他の被告らに対する訴訟を保留し、IBMが方法クレームの個々の工程を実施した証拠も、システムクレームの全ての構成要件を充足する製品を、米国内での、もしくは米国への輸入による、製造、使用、販売、販売申し出をした証拠も、何ら提示しなかったと述べて、IBMの主張を認める略式判決を下した。

特に、IBMはソフトウェアのみを販売しており、クレームはハードウェアとソフトウェアの両方を必要とすることから、地方裁判所は、IBMのソフトウェアが主張クレームの個々の要件を充足するという事実に関する訴訟上の争点の存在をテックセックが提示しなかったと判示した。これらの結論は両方共、いかなるクレーム解釈に関する争点とは独立したものである。

非侵害認定の別の理由として、地方裁判所はクレームを解釈し、テックセックはIBMの侵害被疑品がクレームの構成要件の全てに合致することを立証しなかったとして、再度法律問題としての判決を下した。

こうして地方裁判所はIBMの主張を認める終局判決を下した。テックセックは控訴し、テックセックがIBMの侵害を立証しなかったこと、及び地方裁判所のクレーム解釈の両方について反論した。CAFCは、連邦裁判所規則第36条に基づき、地方裁判所の判決を意見書無しで追認した。

この控訴審の後、裁判は他の被告に関する地方裁判所での審理に移った。テックセックは、IBMの訴訟手続きにおいてなされた地方裁判所のクレーム解釈に基づいた他の被告による侵害の立証は不可能であると明記していた。これに基づき、地方裁判所は他の被告らの特許侵害無しとの判決を下した。

テックセックは再度控訴し、当事者らは、IBMの控訴審における争点だった、IBMの裁判における地方裁判所のクレーム解釈をテックセックが再度議論することが可能か否かについて争った。これに対して被告らは、連邦裁判所規則第36条によるCAFC判決が、既判力の原則(mandate rule) 及び争点効(collateral estoppel:先の判決で確定した訴訟原因の判断の前提に対する禁反言)に基づき、テックセックがクレーム解釈について再度主張することを不可能にしていると主張した。

CAFCは、既判力の原則は、控訴審において潜在的もしくは明白に決定した争点の再考を排除するものであり、地方裁判所はIBMの侵害行為に関する立証が無かったとの認定において、テックセックによる争点のクレーム文言の解釈の提案を拒絶することに依拠してはいなかったと述べた。

地方裁判所はさらに、テックセックがIBMのソフトウェアが解釈されたクレーム限定に合致していることを立証しなかったとも判示していた。連邦裁判所規則第36条に基づく判決は、明確に肯定の理由を述べてはいなかった。したがってCAFCは、記録上、CAFCの略式追認は、明確的、もしくは必要に応じ黙示的に、IBMの控訴審におけるクレーム解釈の争点を決定するものであったと判示したのである。

CAFCは、第36条の判決は、事実審裁判所の正しい判決を登録することを単純に確認することであり、事実審裁判所の判決理由の一部を支持または拒絶するものではないと説明した。

CAFCは、少なくとも立証不十分の認定による非侵害の判決を維持するために、クレーム解釈は不可欠ではないことから、既判力の原則は他の被告に関する関連事件において、テックセックがクレーム解釈に反論する余地を排除するものではないと結論付けた。

同様の理由により、CAFCはさらに、争点効はテックセックがクレーム解釈に反論する上での障害とはならないと判示した。争点効を立証するために、当事者は、訴訟の争点が実際に手続き以前に決まっていたこと、および、争点が重要で判決の要部であることを立証しなければならないのである。

さらにCAFCは、先の裁判における裁判所は、2つの争点について判断を下したが、その2つの争点は、それぞれ単独で結果を裏付けることが可能であり、そのどちらの判断も判決には不可欠なものではなかった、と述べた。地方裁判所の判決は2つの独立した別の理由に基づいて下されたものであり、(先の判決で)CAFCは見解書なしで判決を支持していたことから、CAFCは、クレーム解釈はIBM控訴審において重要ではなく略式判決維持に必要ではなかったと判示した。したがってCAFCは、争点効は適用されないと結論付けた。

レイナ判事は合議体の多数派判決に対する反対意見を述べた。レイナ判事の見解では、CAFCによる意見書なしの判決は、地方裁判所の判決の根底にある争点を最終的状態にするものであった。レイナ判事は、クレーム解釈の立証の有無、もしくは、IBMの侵害被疑品がクレーム限定を満たしていることの立証の有無に関係なく、クレーム解釈は非侵害の判断の要部であったと見解を述べた。

レイナ判事は、テックセックは既判力の原則または争点効に基づいてクレーム解釈の再度議論することから排除されるべきであったと結論付けた。

Key Point?この事件は、地方裁判所が判決において1つ以上の根拠を提示した場合に、CAFCによる意見書無しの追認判決の主題となっていた争点に対し反論することが可能であることを明らかにした。 ある状況下において、特許権者がある争点について元の裁判で敗訴していても、その裁判から切り離された他の被告に対して、特許権者が同じ争点を再議論することが認められたことから、この判決は複数の被告人裁判における被告にとって、ややリスクを提示したように思われる。?CAFCが、地方裁判所の判決を規則第36条に基づき見解書無しで追認することを適切か否か判断する際に、この判決が影響を及ぼす可能性がある。