CAFC判決

CAFC判決

Sun Pharmaceutical Indus., Ltd. 対 Eli Lilly and Co.事件

No. 2010-1105,2010,10,28-Jul-10

自明型二重特許の分析手法,この事件は、先願のクレームと明細書が共に後願でクレームされている発明を記載している状況でのCAFCの自明型二重特許の分析手法を再確認した事件です。,CAFCは、先願の明細書を考慮し、先願における開示の全体を踏まえて、特許クレームの技術的範囲を確定する手法を採用しました。

自明型二重特許の分析手法

CAFCは、米国特許第5,464,826号(以下、826特許)のクレーム2、6及び7を米国特許第4,808,614号(以下、614特許)に基づく自明型二重特許に相当するため無効であるとしたミシガン州東部地方裁判所の判決を支持した。

イーライリリー(Eli Lilly)は、有効成分ゲムシタビンを含む癌の治療薬であるジェムザール(登録商標)を販売している。614特許はゲムシタビンそのもの及び、ウィルス感染治療にゲムシタビンを使用する方法に関する。826特許は、癌治療にゲムシタビンを使用する方法に関する。614特許は、米国特許出願第473,883号(以下、883出願)の一部継続出願について特許されたものである。

当事者は、614特許が883出願の出願日の利益を受けることに異議を唱えなかった。883出願は、単にゲムシタビンの抗ウィルス作用を記述したにすぎなかったのである。614特許となった出願では、明細書にゲムシタビンの抗癌作用が追加されたが、614特許は癌の治療のためにその薬を使用する方法をクレームしていなかった。

826特許となった出願は、614特許となった出願と同日に出願されていた。826特許のクレーム2は癌治療のためにゲムシタビンを使用する方法に関する発明である。クレーム6及び7は、ゲムシタビンを含む薬物群と、特にゲムシタビンによる特定の癌治療に関する発明である。826特許の特許権は、614特許の特許権が消滅した2年半後に消滅した。826特許に関して、特許権の存続期間のターミナル・ディスクレーマーは提出されていなかった。

ジェネリック医薬品メーカーであるサン(Sun)は、食品医薬品局(FDA)によるジェムザール(登録商標)のジェネリック版の販売許可を求め医薬品簡略承認申請(ANDA)を申請した。

ANDAに関連して、サンは614特許及び826特許が無効であり、それらの特許権を侵害していないことを証明した。それからサンは、826特許は無効であり、その特許権を侵害していないとの判決を求め、イーライリリーに対し確認判決訴訟を提起した。これに対し、イーライリリーは826特許及び614特許に係る特許権侵害に関して反訴した。

地方裁判所は、826特許において主張されたクレーム2、6及び7は614特許に基づく自明型二重特許のために無効とする一部略式判決を認め、614特許の明細書中におけるゲムシタビンの抗癌への使用の開示、及びゲムシタビンに関するクレーム12を考慮に入れると、826特許のクレームは無効であるとした。

地方裁判所の判決を再審理し、CAFCは、Geneva Pharmaceuticals, Inc. 対 GlaxoSmithKline PLC事件(349 F. 3d 1373(Fed. Cir. 2003))(以下、ジュネーブ事件)を引用した。ジュネーブ事件では、先願が化合物をクレームし、明細書では人体でのβ-ラクタマーゼの抑制におけるその有効性が開示されており、後願では、人体もしくは動物においてβ-ラクタマーゼの抑制をもたらす化合物の使用法をクレームしていた。

CAFCは、先願のクレームについて技術的範囲を検討するために、化合物の使用が開示された明細書を審理しなくてはならないと判断した。後願は単に化合物の使用法として先願で開示された効用をクレームしていたにすぎなかったので、自明型二重特許のために無効とされた。

同様にPfizer, Inc. 対 Teva Pharmaceuticals USA, Inc.事件(518 F. 3d 1353(Fed. Cir. 2008))において、CAFCは炎症関連疾患の治療のために特定の化合物を使用する方法をクレームした特許は、化合物をクレームした先願と炎症及び炎症関連疾患の治療における化合物の使用を開示する明細書とを考慮に入れ、自明型二重特許のために無効であると判断していた。

この事件において、CAFCは自明型二重特許を分析する際に、裁判所は特許クレームの範囲を確定するために先願の明細書を審理すべきであると認定し、抗癌剤への使用を開示していない614特許の親出願の明細書が考慮されるべきとするイーライリリーの主張を却下した。

CAFCはまた、614特許のクレームは発行された特許全体を踏まえて考慮されるべきであるとし、826特許のクレーム2、6及び7が自明型二重特許のために無効であるとした地方裁判所の判決を支持した。

Key Point?この事件では、先願のクレームと明細書が、ともに後願でクレームされているものを記載している状況におけるCAFCの自明型二重特許の分析手法が再確認された。CAFCは、先願の明細書を考慮し、先願における開示の全体を踏まえて、特許クレームの技術的範囲を確定する手法を採用している。