CAFC判決

CAFC判決

Genuine Enabling Technology LLC 対 任天堂事件

CAFC, No. 20-2167 (April 1, 2022)

クレーム解釈の際、判例(Phillips対AW事件(CAFC, 2005))により外部証拠よりも内部証拠に高い信頼性が置かれる。本件はその判例を踏まえ、クレーム解釈時に内部証拠が重視されることを改めて明確にした。

クレーム解釈では、クレーム、明細書や審査経過に支持されていない専門家証言による外部証拠より内部証拠が重視されるところ、外部証拠に依拠した地裁の文言解釈を誤りとし、その理由を明示した判決

原告(Genuine Enabling Tech)は、米国特許6,219,730の特許権者である。この特許は、コンピュータ用の「ユーザー入力装置」(UID)に関するものである。USPTOの審査官は、当初、先行特許から原告のUID発明が自明であるとして全クレームを拒絶した。しかし、出願人は、自分の発明が音声(audio)またはより高い周波数(higher frequencies)の信号を用いるので、低速で可変の信号(slow-varying signals)を用いる先行技術とは区別されると主張した。審査官はその主張を受け入れ、UID発明に特許を認めた。

原告は、任天堂の5種類のゲーム機(Wiiシリーズ)がUID特許を侵害するとして地裁に提訴した。UID特許の全クレームに「入力信号」(input signal)の文言があり、原告はそれが「音声またはより高い周波数の信号」であると主張した。それに対して被告は、UID特許からは「500Hz以下の周波数の信号」が除かれていると主張し、それを裏付ける専門家の証言を提出した。地裁は、被告の主張に沿った文言解釈を行い、トライアルを開かずに非侵害の略式判決を下した。事案はCAFCに控訴され、CAFCは、以下のように述べ、地裁の判決を破棄した。

外部証拠は、いくつかの理由から、内部記録よりもクレーム解釈の目的で一般的に「信頼性が低い」。外部情報源は、問題となっている特許の範囲を明らかにする目的で書かれたものではなく、当業者とは異なる一般のために書かれた可能性があり—–訴訟当事者の立場を前進させるために、潜在的に関連する資料の無限の世界から選択的に引き抜かれた可能性がある。

したがって、外部証拠に「過度に依存する」ことには注意を促してきた。なぜなら、それは「クレーム、明細書、および審査経過からなる議論の余地のない公の記録を無視して、クレームの意味を変更するために使用される危険性があるためである。

言い換えれば、外部証拠は、裁判所が特許を理解するために使用されるべきであり、クレームの条件を変更または矛盾させる目的で使用されるべきではない。外部証拠の一種である専門家の証言は、「問題となっている技術の背景や発明がどのように機能するかを説明し、特許の技術的側面に関する裁判所の理解が特許のそれと一致していることの確認のために、クレームの解釈に役立つ可能性がある。または、特許または先行技術の特定の文言の関連分野での意味の確認に役立つ。ただし、専門家の証言は、内的な記録(クレーム、明細書、審査経過)から著しく逸脱するために使用することはできないと述べています。

そして、本事案との関係で、発明者が審査時に排除したのは「音声周波数スペクトラム以下の信号」である。500Hzの線引きは、外部証拠(=専門家証言)に依拠したものであり、内部証拠に支持されるものではないと認定し、地裁判決を破棄した。