CAFC判決

CAFC判決

Click-to-Call Technologies, LP 対 Ingenio, Inc.事件

CAFC, No. 22-1016 (August 17, 2022)

この事件でCAFCは、被告が、IPRで特定のクレームに対する無効主張においては使用していなかったが、別のクレームに対する無効主張において使用していた公知例を、侵害訴訟でこの特定のクレームに対する無効理由の根拠として改めて使用したことに対して、SAS最高裁判決前の審理実務のためにこの特定のクレームに対するIPR審理が開始されていなかったにもかかわらず、「禁反言」を適用して主張を排斥した。

原告のClick-to-Callは2012年、保有するUSP5,818,836の侵害を理由にIngenioを含む複数の企業(以下、被告)を提訴した。地裁は「マークマン・ヒアリング」を行い、原告に被疑侵害のクレームの項数を8個に絞り込むように命じた。被告は絞り込まれた8個のクレーム全てについてのIPRをPTOに申請していた。被告は8個のクレームのうちClaim 27を除く7個のクレームを「Dezonno文献」で無効とすることを求めた。また、Claim 27については「Freeman文献」だけで無効を求めた。地裁での審理は、被告の申立てによりIPRの結果が出るまで停止された。

PTABは、「Dezonno文献」を無効理由とするIPRの開始を決定し、Claim 27を除く残りの7個のクレーム全てを無効と決定した。Claim 27についてはIPRの開始を決定しなかった。原告はこのPTAB決定についての上訴したが、その後審決は確定した。一方、上訴審の係属中に連邦最高裁が「SAS Institute Inc. v. USPTO. et al, 事件」(2018年)で「IPR申請のあったすべてのクレームを審査しなければならない」と判決した。しかしながら、被告はPTABのIPR一部開始決定に対する不服は申し立てなかった。

IPR手続きが終了した後、地裁での審理が再開された。被告は、Claim 27の無効判決を求めるモーションを提出した。被告が引用した無効資料は、IPR手続きとは異なり、「Dezonno文献」であった。原告は、「禁反言」(エストッペル)を根拠にして被告のモーションを退けるよう主張した。しかし、地裁は原告の主張を退けて特許無効の略式判決をしたので、こを不服として原告はCAFCに控訴した。

CAFCは地裁の判決を破棄して事案を差戻した。その理由をCAFCは次のように説明した。本件の「禁反言」の問題は特許法315条(e)(2)に基づく問題であるにも拘わらず、地裁はコモンローを適用して判断したため法適用上の誤りがあった。

なお、特許法315条(e)(2)は、IPR手続きの中で合理的に提示できたであろう文献をその後の侵害訴訟の場に持ち出すことを禁止しているので、IPRの中でクレーム27に対して「Dezonno文献」を被告が主張できた筈であることを立証できれば、特許法315条(e)(2)が定める禁反言により「Dezonno文献」を用いた無効主張は排斥される。