CAFC判決

CAFC判決

Weisner & Nemanov対Google事件

CAFC, No. 21-2228 (October 13, 2022)

この事件でCAFCは、「アリス事件」最高裁判例の「二段階テスト」を適用して、同一の明細書記載を持つ特許4件のうち2件を無効、残りを有効と判断した。

Weisnerは2020年4月、Googleが米国特許10,380,202を侵害したとしてニューヨーク州南地区地裁に提訴した。同年6月、3件の特許(10,642,910、10,394,905 & 10,642,911)を訴状に追加した。係争特許は、営業マンの営業記録(leg history)を会社に報告するためのシステムおよびその方法に関する発明で、同一の親特許から派生し、実質的に同一の明細書の内容をもつ。明細書では「leg history」が「時系列での個人の訪問記録の集積」(the accumulation of a digital record of a person’s physical presence across time)と定義されていた。記録には訪問先の建物や面談者データが含まれ、後日の訪問時に検索できるようになっていた。

Googleは、①係争特許発明が特許適格性を有さない、②最高裁判例がもとめる具体的な証拠の裏付けがない―を根拠に訴状却下を求めるモーションを提出した。地裁はGoogleのモーションを認め、Weisnerの訴えを退けた。Weisnerは、「発明の背景」についての記載を修正して改めて訴状を出し直した。地裁は修正された訴状についても、特許不適格は治癒されないとして再提出された訴状を退けた。Weisnerはこの決定を不服としてCAFCに控訴した。

CAFCは、202特許と910特許に「アリス事件」最高裁判例の「アイデアが抽象的かどうか」(第1ステップ)を適用し、両特許の主要クレームのdigital travel logが抽象的なアイデアであるとして地裁の判決を支持した。また、「追加の要素がクレームの本質を特許適格性のある応用に変化させているか」(第2ステップ)を適用し、両特許のクレームは、既存技術にコンピュータを適用しただけのものであり新規ではないとして地裁判決を支持した。

しかしCAFCは、905特許と911特許については、前2者と明細書の記載が同一であるが、主要クレームは異なり、これらの特許の主要クレームはコンピュータ検索結果を改善するためにtravel logを生成及び使用するものであることを指摘した。そして、発明は抽象的アイデアであるものの、クレームには検索結果の改善を達成するためのメカニズムが具体的に十分に記載されているから、第2ステップにおいて特許適格性が認められると判断した。CAFCは、それにも拘わらず4つの特許を同等に扱ったのは地裁の判断の誤りであると結論づけた。