CAFC判決

CAFC判決

Finjan, Inc.. 対 ESET, LLC 事件

CAFC, No. 21-2093 (November 1, 2022)

この判決でCAFCは、明細書に参照により組み込まれたファミリー特許で限定的な用語が使用されていることに基づいて係争特許の用語を狭く解釈した地裁の判断は誤っているとした。

参照により組み込まれたファミリー特許の記載に基づく用語の限定解釈について争われた事件

Finjianは、“Downloadable”にコンピュータ・ウィルスがあるかどうかを検知するためのシステム及び方法に関連する特許を11件所有する。11件の特許は、全てが1996年の特許出願を祖とするファミリー特許であった。Finjianはその中の4件の侵害についてESETを提訴した。地裁は、係争特許全てのクレームに、“Downloadable”という用語が使用されているため、その意味を確定するためにマークマン・ヒアリングを行った。これらの特許の基礎である639出願の明細書では、この用語は「ソースコンピュータからダウンロードでき、目的のコンピュータ上で操作可能な、自己実行可能なかつ理解可能なアプリケーション・プログラム」であると定義されている。一方で、地裁は、11件のファミリー特許の明細書に記載されている定義や実施例を考慮して、“Downloadable”を「小さな」(small)アプリケーション・プログラムに限定して解釈すべきであると判断した。この限定解釈は、incorporation by referenceされていたファミリー特許に記載の限定を係争特許に適用したものであった。その結果、地裁は「主題が不明確」(indefinite)な発明であるとする「サマリー・ジャッジメント」(略式判決)を下した。ESETはこの判断を不服としてCAFCに控訴した。

CAFCは地裁の略式判決を破棄し、事案を地裁に差戻した。その理由をCAFCは次のように述べた。“Downloadable”を「小さな」アプリケーション・プログラムに限定して解釈した地裁の解釈は誤りである。クレームは明細書に照らして読まれなければならず、ここでいう明細書はincorporation by referenceにより組み込まれた特許も含む。しかしながら、incorporation by referenceは、特許発明を、組み込まれた他の特許発明に変換するものではない。地裁が、ファミリー特許間で用語の定義が一致していないことに基づいて、本件特許における解釈で最も狭い定義を採用したことは誤りである。Incorporation by referenceされた先行出願で限定的に使用された用語であっても、本件ではその用語が削除されているのだから、先願の限定された用語解釈の制限を受けることはないからである。