CAFC判決

CAFC判決

TocMail Inc. 対 Microsoft Corp. 事件

11th Circuit, No. 22-10223 (April 25, 2023)

この事件で控訴審判所は、地裁が虚偽の事実が立証されていないとの理由で「虚偽表示」(ランハム法下のfalse advertisement)の請求を退けたのに対し、その理由を「原告適格がない」との理由に変更した。

他社製品のランハム法に基づく虚偽表示を訴えて利益の返還を求めた事件

Microsoftはサイバー攻撃からe-mailユーザーを守るためのセキュリティ・ソフトを提供している。このソフトは標準装備ではなく、ユーザーが追加購入するものである。

TocMail Inc.はサイバーセキュリティ分野の新興企業で、IP evasionと呼ばれる特殊なサイバー脅威に対応する製品開発を行い、関連特許を取得した。Microsoftをランハム法にもとづく虚偽表示(false advertisement)により地裁に提訴し、MicrosoftのソフトがIP evasionからユーザーを守ると誤解させたとしてMicrosoftを訴えた。TocMailの販売実績はほとんどなかったが、訴状では1億人ものユーザーが奪われたとしてランハム法にもとづく利益の返還(4300百万ドル)を求めた。

Microsoftは請求棄却をもとめるモーション(理由:原告適格の不存在)を提出したが、地裁はそれを認めなかった。Microsoftは2回目のモーション(理由:虚偽表示による被害立証の不存在)を改めて提出したが、地裁はそれも認めなかった。地裁は、TocMailがMicrosoftによる「詐欺」を立証できなかったとしてMicrosoft勝訴の略式判決を下した。TocMailは第11控訴審に控訴。

控訴審は地裁判決を取消し、本件を「原告適格の不存在」を根拠に棄却するよう指示書付で差し戻した。控訴審はその理由を次のように述べた。TocMailは、事実上の被害を立証しなければならない。それは個別・具体的であり、実際に切迫したものでなければならない。推測的・仮想的なものであってはならない。TocMailが提出した証拠は、そのような被害の存在を合理的に認めさせるものではない。また、Microsoftの宣伝が無ければ公衆はTocMailの製品を購入したであろうとの証言も、Microsoftの商品により失われた販売額を算出した専門家証言も出されていない。