CAFC判決

CAFC判決

StratosAudio,Inc. 対 Volkswagen and Hyundai 事件

No.2022-108,2022,3,9-Mar-22

この事件は、自分の支社やオフィスは無いが、dealership(販売店)だけがある地に、裁判管轄を認めた地裁の決定が争われた事件である。

管轄地に関する判例法の解釈を濫用したWDTXに対する職務執行令状事件

StratosAudio,Inc. (Stratos) が、Volkswagen(VW) と Hyundaiをテキサス西部地区連邦裁判所(WDTX)に特許侵害事件を提訴した。

この数年WDTXが特許訴訟の裁判地として頻繁に選ばれるようになったが、特にTC Heartland以来、Venueの条件を満たすことが難しくなったにもかかわらず、Albright判事はWDTXを特許訴訟の裁判所として売り込み多くの件を自分の裁判所に集めてきた。

VWと Hyundaiの自動車販売会社は、ニュージャージーと、カリフォルニアに設立されているので、テキサス西部地区には所在していない。

VW と Hyundaiは、裁判所に管轄不在のモーションを出したが、裁判所は否定した。VW等とフランチャイズ契約を持つ独立した自動車販売店がテキサス西部地区ある。そのフランチャイズ契約によりVW等が自動車販売店を十分にコントロールすることを理由に地裁は管轄の要件である確立された事業所を認定し、管轄地を認めた。

更に、裁判所は、VW・Hyundaiと販売店間の契約書を見て、販売店を代理店と位置付け、VW・Hyundaiはその代理店を通してのみ、西部地区でビジネスが出来るので、代理店の活動をVW・Hyundaiの活動として捉えた。

この決定に対し、VW・Hyundaiは、CAFCに対し、地方裁判所への職務執行令状(writ of mandamus)の発行を求めた。米国の法制度において、職務執行令状とは、下級裁判所が法に定められた責務を果たすように命じる、上級裁判所の下級裁判所に対する命令である。職務執行令状は、例外措置としてのみ用いられる特別な救済措置である。法の正しい執行のために非常に重要な、限定された状況では職務執行令状が使える。例えば、基本的な法解釈において多くの連邦裁判所の衝突する解釈をしている場合などがそうである。

ここでの争点は、販売店が管轄地を確立するための要件を満たすか否かである。

CAFCは、フランチャイズ契約による管轄地の確立を従前から認めていない。次に、販売店による管轄の確立を検証したが、販売店はVW・Hyundaiのサービス品質の維持のためであり、VW・Hyundaiは販売店を日々コントロールしていないと判断し、CAFCは販売店がVW・Hyundaiの代理店(agents)であることのStratosの主張を否定した。

この結果、CAFCは、訴訟の棄却、移送を求めたモーションを否定した地裁の命令を破棄し、地裁に事件を差し戻した。

TC Heartland(2016-105, Fed. Cir. 2016年4月29日)の判決では、管轄は確立した事業所(Regular and established place of business)の条件を満たす必要がある。この条件は例えば本社によって直接管理される事業所により管轄要件を満たすことができ、被告のVWとHyundaiはそのような事業所をWDTXに持っていなかったので、その条件に一番近いのがDealership(販売店)であったのがこの事件である。

WDTX に件数が集まりすぎるのを防ぐために管轄要件が絞られたが、今後この判決は管轄要件に関してどのような影響を及ぼすか注目に値する。

情報元:

Dr. Min Woo Park

Morgan, Lewis & Bockius LLP