CAFC判決

CAFC判決

SiRF Technology, Inc 対 International Trade Commission 事件

No. 2009-1262,2010,6,12-Apr-10

特許権者の推定と原告適格、方法クレームに対するBiliski判例の適用について,登録された譲受人がその特許の特許権者であるという推定に異議を唱えるための実質的な証拠は被告が提示しなければならないことを明らかにしました。,共同侵害問題を回避するために1名の実施者による行為だけを要求する手法でCAFCはクレームを解釈しました。最後に、Biliski件の「機械又は変換」基準に関して、クレームの記載に意味のある限定を加えている機械に方法クレームが結びついている限りにおいて、その方法クレームは米国特許法のもとで特許の主題であることを認めました。

職務発明に係る特許を受ける権利の譲渡契約が特許権侵害訴訟における原告適格に及ぼす影響と、方法クレームに対するBiliski判例の適用について

Global Locate, Inc(以下、GL)は全地球測位システム(GPS)を用いる方法を対象とする複数の米国特許第6,606,346号、同6,651,000号(以下、これらを本件特許)などを保有する特許権者である。

GPSとは、地球を周回する衛星からの信号を受信機で検出して各衛星からの自身の距離を算出し、それによって自身の正確な地球上での位置を算出することを可能にする衛星ナビゲーションシステムのことである。

各衛星は2種類の情報をGPS受信機へ送信する。一つは擬似ランダムノイズコードであり、もう一つはナビゲーションメッセージである。ナビゲーションメッセージは受信信号が衛星によって送信された時刻に関するデータ、衛星の位置及び軌道並びに他の衛星の位置を示す情報を含む。

GLは、SiRFによる米国への輸入並びに所定のGPSチップ、チップセット、製品及びソフトウェアの販売は本件特許の特許権を侵害すると主張する訴状を国際貿易委員会(以下、ITC)に提出した。

行政法裁判官(以下、ALJ)は、すべての本件特許の請求項は有効であり、その特許権は侵害されたと結論付ける最初の決定を下した。ITCはALJの決定を支持し、GPS装置の輸入及び販売を禁止する部分的排除命令及び停止命令を下した。CAFCはITCの認定を支持した。

控訴審において、SiRFは、特許権の共有者といわれているMagellan(以下、マゼラン)が加わることなく346特許のもとで訴訟を提起するための当事者適格をGLが有していないと主張した。

SiRFは特に、GLが登録されている特許権者であったとしても、346特許における記名された発明者はマゼランと職務発明契約を結んでおり、この契約で発明者は「(その)業務に関連するまたは有用な…発明」のすべてをマゼランに譲渡していた、と主張した。連邦法を適用して、CAFCは、この契約を発明が完成した際にその発明の権利を自動的かつ有効に譲渡する自動譲渡契約であると解釈した。しかしながら、CAFCは、GLへの譲渡をPTOへ登録することにより、その譲渡が有効であるという覆しえる推定が形成されると言及した。CAFCは、マゼランが346特許の特許権の共有者であることを示す証拠をSiRFが十分に提示していなかったため、GLはマゼランなしに訴訟を提起する当事者適格を有していると判断した。

次に、SiRFは、クレームに記載された方法のすべての工程を自身が実行しているわけではなく、共同侵害理論の下でこれらの工程を実行する第三者を管理してもいないため、651特許及び000特許の特許権を侵害していないと主張した。SiRFによれば、651特許のクレーム1に記載されたモバイルGPS受信機へデータを「通信する」工程と、000特許のクレーム1に記載されたリモート受信機へデータを「送信する」工程とは、顧客及びエンドユーザによって実行されるのであって、SiRFが実行するのではない、とのことであった。しかしながらCAFCは、「通信する」工程及び「送信する」工程は、直接の通信または送信に限定されないと解釈した。自身の顧客及びエンドユーザが実際にはデータをダウンロードするにしても、SiRFが通信または送信するプロセスを開始することによってこれらのステップを実行したといえるからである。

同様に、SiRFは、651特許のクレーム1に記載されたモバイルGPS受信機で受信した信号を「処理する」工程と、000特許のクレーム1に記載されたリモート受信機によってサポートされる形式でデータを「表現する」工程とが、モバイルGPS受信機を用いてエンドユーザによって開始されるため、これらの工程を実行していないと反論した。

CAFCはこれに同意しなかった。CAFCが言及するように、「GPS受信機が利用可能になり、データを処理する準備が一度整ってしまえば、SiRFの動作はデータを「処理」または「表現」する工程に関与するだけである」。よって、「処理」する工程及び「表現」する工程が生じる前にエンドユーザは、まずSiRFのサーバからデータを主体的にダウンロードしなければならない、という事実は重要ではなかった。

CAFCは、特許されたクレームのすべての工程をSiRFが実行したと結論づけて、直接侵害についてのITCの決定を支持した。

最後に、SiRFは米国特許法第101条のもとで、801特許及び187特許に係る方法は有効な特許ではないと主張した。

具体的には、クレームに記載された方法は全体的に人間の精神活動において実行され得るため、Bilski事件(545 F.3d 943, Fed. Cir. 2008)において判示された「特定の機械または装置に結びついているか」または「特定の物質を異なる状態または物へ変換する」基準を満たしていないと主張した。

SiRFの反論を却下するために、CAFCは、本件クレームは「GPS受信機から複数のGPS衛星への」距離を推定するための「擬似範囲」、「衛星信号受信機に関連」する「状態」の推定、及び「衛星信号受信機の位置を算出するための…動的モデル」の構造を要求すると述べた。CAFCは、本方法がGPS受信機を用いずに実行することができないから、このことは「クレームの範囲に意味のある限定を与えるものである」と認定した。結果として、801特許と187特許のクレームは「特定の機械に結びついている」といえる。

SiRF事件は、登録された譲受人が本件特許の特許権の所有者であるという推定に異議を唱えるための実質的な証拠は被告が提示しなければならないことを明らかにしている。また、本件は、共同侵害問題を回避するために単一の実施者による行為だけを要求する手法でクレームを解釈するといったCAFCの積極的な意思を示している。

最後に、Bilski事件の「機械または変換」基準に関して、クレームの範囲に意味のある限定を与える機械に方法クレームが結びついている限りにおいて、その方法クレームは米国特許法第101条のもとで特許主題となりうる。