IPRの差戻し審で新たに提出された証拠を、PTOの「2019年IPRガイド」が規定する「新たに導入された無効理由」には当たらないとした事例。
IPRにおける無効主張が新たな主張に当たり許されないかどうかが争われた事件
原告(Rembrandt)は生体液(biological fluids)の検査装置及びその方法に関する特許(6,548,019)を保有し、2016年に被告(Alere, Inc.)を特許侵害で提訴した。被告は同特許についてのIPRを申請した。PTABは、クレーム2を無効としたが、それ以外のクレームについては被告の無効資料では原告特許を無効にできないと決定し、また一部のIPR対象クレームについては審理を行わなかった。被告はCAFCに控訴。CAFCは、最高裁判決(SAS v. Inacu, 2018)に鑑み、申請のあったクレームをすべて審理しなければならないとしてPTABの決定を破棄・差戻した。
差戻された2回目のIPRで、被告は専門家証人の鑑定書を提出して無効理由を補強した。原告はその鑑定書が新しい無効理由の導入にあたるとして反対したが、鑑定の対象は本件の争点に関連するものではなかった。PTABは、クレーム2-6,クレーム10を無効と決定し、原告はCAFCに控訴。
CAFCは、原告の主張を退け、PTABの決定を支持した。その理由を次のように述べた。2回目のIPRで主張された論点は、原告の主張に対する反論とPTABのコメントに対する回答であり、無効理由を新規に導入するものではない。
本件は「2019年IPRガイド」に関するものである。PTABは本件で先行特許5件を組み合わせて本件特許を無効とした。被告の提出した鑑定書は無効理由を補強するものであって新規の無効資料とは見做されなかった。