CAFC判決

CAFC判決

REG Synthetic Fuels, LLC 対 Neste Oil Oyj, 事件

2015-1773,2017,1,8-Nov-16

この判決は、必要に応じてIPR手続における審判部の証拠判断をCAFCが再検討することを示す。また、REG事件は、発明を先に着想したことを立証するためには、発明者はクレームの全ての限定を認識し、その理解を他の人物に伝えたことを証明する必要があることを再確認した。過去の判例から一貫して、本判決は、クレームに記載の発明の着想を証拠書類で立証するために、クレームに記載されていない発明の特徴まで証明する必要がないことを明らかにした。

当事者系レビュー(IPR)での証拠判断をCAFCが再検討する基準を示した判決

REG(REG Synthetic Fuels, LLC)事件において、CAFCは、REGの米国特許第8,231,804号(804特許)のクレーム1~5及び8に対するネステ(Neste Oil Oyj)の申立で当事者系レビュー(inter partes review)の審判部(Patent Trial and Appeal Board)の審決を審理した。

審判部は、米国特許第4,992,605号(以下、「クレイグ(Craig)」)を引用し、804特許のクレーム1、3、4、及び8は新規性なしと判断し、さらに、米国特許公開第2008/0312480号(「ディンディ(Dindi)」を引用し、クレーム1?3、5、及び8は新規性がないと判断した。REGは審判部による決定、及び特定の証拠書類の除外について控訴した。

争点の特許は、主に偶数の炭素数を有するパラフィンを含むパラフィン組成とその製造方法に関する特許である。(パラフィンは炭素原子及び水素原子を含む炭化水素鎖である)偶数の炭素数を有するパラフィンは、飽和炭化水素鎖であり、CnH2n+2の一般化学式を有し、「n」は偶数である。偶数の炭素数を有するパラフィンは、住宅用の断熱材として使用される相変化物質として有用である。

CAFCはまず、クレイグが、炭化水素生成物をクレームにおいて記載された重量パーセントの代わりに、ピーク面積パーセントとして量を開示していたことにより、804特許のクレームの新規性が失われたか否かついて検討した。

CAFCは、当業者であれば、開示されたピーク面積パーセントを対応する重量パーセントに容易に変換できたと認定した。この認定に基づき、CAFCは、測定単位が異なっているからといって、クレイグが804特許にクレームされた濃度と同一の偶数の炭素数を有するパラフィンの濃度を開示しているといった事実は変わるものではないと結論付けた。

したがって、CAFCは、クレームされた偶数の炭素数を有するパラフィンの濃度をクレイグが明示的に開示していたことにより、804特許のクレーム1、3、4、及び8の新規性がないとした審判部の判断を支持した。

次に、CAFCは、クレーム2及び5について、審判部が判断したように、804特許に対してディンディは先行技術文献としての適格性があるか否かについて検討した。

CAFCは、ディンディよりも先行するためには、REGは、発明者が他者に対してクレームに記載の発明の個々の特徴を「当業者が実施可能に明瞭な文言で表現された完全な思考」を開示した証拠を提出することにより、ディンディの出願日以前に着想したことを立証する必要があると述べた。

先の着想を証明するために、REGは幾つかの証拠書類を提示したが、その1つには、発明者が第三者に80重量%の炭化水素を達成したと開示した電子メールのやりとりが含まれていた。しかし、審判部は、そのメール交換を伝聞証拠として除外した。

この証拠を除いた結果、審判部は、生成した化合物における偶数の炭素数を有するパラフィンの割合が「少なくとも80重量%」であるというクレーム限定を満たしていたことを発明者が認識していたことを立証することができていなかったため、REGは先の着想を立証していないと判断した。

CAFCは、着想に関する審判部の決定を覆した。まずCAFCは、メールでやりとりされた内容は、発明者がその発明を着想したことを第三者に伝えたことを立証する非伝聞的目的で証拠提示されたのであるから、審判部がメールでやりとりされた内容を伝聞証拠として除外したことは誤りであると認定した。

さらに、CAFCは、除外された証拠を考慮すると、REGは、発明者はクレーム2及び5に係る製品を着想し、その理解を他の人物に伝えたことを立証していると認定した。

こうした認定に基づき、CAFCは、除外された証拠と残りの証拠を組み合わせると、発明者がディンディの出願日以前にクレームされた発明を着想していたことが立証されると判断し、発明者が係争対象製品を生成したプロセスを認識していたことの立証義務をREGに課したことは誤りであると説明した。

CAFCは、製造工程は係争対象製品の一部ではないため、REGは、ディンディに先行して具体的な製造工程を先に着想していたことを示す必要はないと述べた。審判部は、先の着想はないと判断したため、勤勉さや実施化の争点については検討しなかった。

従って、CAFCはその点に関する判断、及びディンディは先行技術として認められるか否か、またはREGはクレーム2及び5に関して先行発明を立証できるか否かに関する判断を指示し、事件を審判部へ差し戻した。

Key Point?この判決は、必要に応じてIPR手続における審判部の証拠判断をCAFCが再検討することを示す。また、REG事件は、発明を先に着想したことを立証するためには、発明者はクレームの全ての限定を認識し、その理解を他の人物に伝えたことを証明する必要があることを再確認した。過去の判例から一貫して、本判決は、クレームに記載の発明の着想を証拠書類で立証するために、クレームに記載されていない発明の特徴まで証明する必要がないことを明らかにした。