CAFC判決

CAFC判決

Purdue Pharma L.P. 対 Endo Pharmaceuticals Inc.事件

2005,9,2005年6月7日 CAFC判決

審査過程において重要な情報が故意に隠蔽された場合、特許が無効になることが指摘された事件です。したがって、審査過程において重要な事実を開示することが求められます。この事件のポイントはとりわけ、薬品の効果を主張する場合、実験によって確かめられたものではなく、単なる洞察(推論)によるものであった場合は、審査官をミスリードしたと判断されるおそれがあるところにあります。

実験ではなく、単なる洞察に基づく効果の主張は審査官をミスリードする行為と判断されるおそれがあるとの判断

2005年6月7日、CAFCは、Purdue Pharmaのオキシコンチン薬を保護する数々の特許が審査過程における不正行為のために権利行使不可能であるとした、地方裁判所の判断を支持した。

これらの特許は、痛み治療のためのオピオイド鎮痛薬に関する投薬コントロールに関するものであった。

2000年に、Endoは、オキシコンチンのジェネリック薬を販売するために、医薬品簡略認可の申請(「ANDA」)を米国食品医薬品局(「FDA」)に行った。

これに対し、Purdueは、米国特許法第271条(e)(2)に基づく侵害訴訟を提起した。Endoは、これらの特許が特許審査過程における不公正行為により無効であると主張して反訴を提起したのである。

これらの特許は、1990年代の前半から中半にかけて出願されたものである。最初、自明性を理由に審査官によって拒絶された。自明性の拒絶理由を克服するために、Purdueは、一般的なオピオイド鎮痛薬が8倍の用量幅であるのに比べ、この特別なオピオイド鎮痛薬は4倍の用量幅で90%の患者を効果的に治療することができると主張し、これは「驚異的な発見である」と審査過程で主張していた。

審査過程で、Purdueは、「成果」の「予期せぬ」性質のみならず、より少ない用量幅で済むという臨床上の利点が認められ、その特許は許可された。

地方裁判所は、EndoのANDAがPurdueの特許を侵害すると判断したが、Endoの反論を考慮し、地方裁判所は、審査過程における不公正行為により、その特許は無効であると判断した。

裁判所は、Purdueが審査官に重要な情報を故意に開示しなかったことを、不公正行為の理由とした。

特に、出願人は、用量に関して審査過程で出願人が主張した「予期せぬ成果」が、実際には、発明者の一人による精神的な「洞察」であったにもかかわらず、この成果は、実験的な研究の結果であることを強く示唆していた。

Purdueは、明確な虚偽の陳述をすることなく臨床実験について暗示するよう、慎重に言葉を選んでいることから、地方裁判所は故意を推定した。

Purdueは、地方裁判所が権利行使不可能と判決したことについて控訴した。また、Endoは、侵害の判決について控訴した。

重要な情報を開示しなかったという争点について、Purdueは、まず、重要な事実を明らかに不正確に伝えたわけではないと主張した。

これに対し、CAFCは、明らかな虚偽の陳述は、地方裁判所の判決の根拠ではないと判断した。

現行の米国特許庁規則56の下では、情報が「特許性の理由を主張する際に・・・出願人のとる立場に反したり矛盾したりする」ときに、この情報は重要であるとしている。

地方裁判所は、その発見が、特許性に関してPurdueの行った主張と矛盾し、完全に洞察に基づくものであるとして、この情報を考慮した。

これに基づいて、地方裁判所は、その情報は重要であり、積極的に開示されるべきであると厳格に判断した。

次に、Purdueは、たとえ「驚異的な」用量の「成果」がなかったとしても、特許審査官は特許を許可したであろうから、実験結果の欠如は重要ではないと主張した。

CAFCは、審査官がPurdueの説明に依拠したかどうかと情報の重要性とは無関係であると判断した。

たとえ審査官が「発見」に依拠しなかったとしても、実際に実験結果がないという情報は重要だったからである。

次に、Purdueは、地方裁判所がクレームを4倍用量のものに限定解釈したため、地方裁判所は重要性の認定を誤っていると主張した。

しかし、クレームを限定解釈しなくても同じ結論に地方裁判所は達したであろうし、重要な情報はクレームの中に存在するものに限られないことを地方裁判所は明確に述べているとCAFCは判断した。

また、Purdueは、好適な用量を発見することは製品の便宜に過ぎず、また、審査官も重視しなかったため、重要ではないと主張した。CAFCは、Purdueが用量の発見を、審査官によって発見された先行文献に反論するための主要な主張として採用したと判断し、それゆえ、この主張は重要であると判断した。

最後に、Purdueは、地方裁判所が薬品についての特許出願は臨床結果に基づくことを要求した点で誤っていると主張した。

CAFCは、Purdueが地方裁判所の判決を誤って解釈していると説明し、この主張を退け、特許可能な発見は実験または洞察によってなされうると説明した。

Hoffmann-La Roche, Inc. 対 Promega Corp.,323 F.3d 1354 (Fed. Cir. 2003)を適用して、CAFCは、発見に関する虚偽の陳述は重要であると述べた。

Purdueは、発見が実験結果に基づくものであることを示唆し、また、Purdueが、実験結果の欠如を開示しなかったことを鑑み、CAFCは、Purdueの行為が重要であると判断した。

故意に関して、Purdueは、用量が正しいという情報について誠実な信念を持っていたと主張した。

地方裁判所は、審理での証言とPurdueの内部文書を検討した上で、用量の情報に関する誠実な信念の主張を支持するような証拠が、Purdueによって提出されていないと判断した。

CAFCは、陳述における信念に関する疑義は問題ではないと述べた。

むしろ、重要な問題は、Purdueが重要な情報に関して審査官を欺く意図があったかどうかである。

CAFCは、実験結果が「発見」の基礎をなすことを示唆する際に、明白な嘘を避けるため、Purdueが使用した注意深く選ばれた言葉は、審査官を欺く意図があったことの証拠になると判断した。

欺くことに関する十分な重要性と意図があるため、CAFCは、権利行使不可能という判決を支持した。その結果、侵害の判断には触れなかった。

本件は、特許審査過程における重要事実の開示の重要性を示している点で、有意義である。