この事件でCAFCは、最終決定の法定期限後に出されたPTABによるPGR決定が有効であると判断した。
法定期限後に出されたPGR決定の有効性が争われた事件
Purdue Pharma (原告)は、嫌悪剤を含浸させることでオピオイド鎮痛薬の乱用を防止する配合に関する医薬品特許(第9,693,961号)を保有し、Collegium Therapeutics (被告)を特許侵害で提訴した。被告は、原告特許のクレーム1~17が無効であるとして付与後異議(PGR)を申し立てた。侵害訴訟とPGR手続きは並行して進められた。
被告は、対象特許が、特許法改正(AIA)施行前の特許出願に対する優先権主張を伴うため、PGR手続きの対象にならないとして、PGR開始に反対した。しかし、PTABは、優先権基礎出願の内容が対象特許のクレームをサポートしているわけではないから、対象特許は改正特許法の適用を受けるとして、被告の反対を退け、PGRを開始した。
PTABは法定期限内(1年以内)にPGRの最終決定を行わなければならない(特許法326条(a)(11))が、原告はこの期限前に破産通知を行い、手続きの自動的な停止を求めた。被告は手続きの停止に反対した。しかしながら、必要な救済は破産裁判所に求めるべきであるとしてPTABはPGR手続きを停止し、最終決定の期限を6ヶ月延長して2020年4月とした。この期限が経過した後の2020年7月に、破産裁判所は手続きの停止を解除することを命じた。
PGR手続きと訴訟手続きが再開すると、Purdueは、延長された最終決定の期限を過ぎたので、PTABにはもはや最終決定を出す権限がないとして、PGR終了を求めるモーションを提出した。しかし、PTABはこの主張を退け、PGR対象のクレーム1-17を記載不備および自明性により無効とする最終決定を下した。その決定を不服としてPurdueはCAFCに上訴した。
CAFCは、連邦最高裁判例に従えば、特段の規定が無い限り、期限後であってもPTABには最終決定を下す権限が認められるとして、PTABによる最終決定を支持した。CAFCは、法律が期限に関する規定を有していても、期限の不遵守による結果を規定していないのであれば、期限を経過した場合に官庁が権限を失うことを議会が意図していたと推定するべきではないこと、このような場合には条文及び期限の目的を検討すべきであること、を示す判例を挙げた。そして、CAFCは、PGRに関して最終決定の期限の不遵守による結果は規定されておらず、PTABが最終決定を出す権限を有するとの結論に反する条文の文言又は立法経緯は存在しないことを指摘して、PTABが最終決定を出す権限を有していたと認定した。
米国特許法改正(AIA)によって、従来の当事者系再審査が廃止され、その代わりに「付与後レビュー」(PGR)と「当事者系レビュー」(IPR)が導入された。PGRの申立期間は登録日から9ヶ月以内であり、これは欧州の異議申立制度に相当する。IPRの申立期間は登録日から9ヶ月経過後である。