CAFC判決

CAFC判決

Promptu Systems Corp. 対 Comcast Corp. 事件

CAFC, No. 2022-1939 (February 16, 2024)

原告が地裁で争うことを断念し、意図的に敗訴判決を求め、CAFCで争う戦略を選択した。CAFCでは、原告の狙い通り逆転勝訴した。米国の訴訟戦略の一端をうかがわせる好事例である。

侵害事件で地裁が、被告のクレーム解釈を採用したため、原告が地裁での侵害論争を断念し、意図的に敗訴(非侵害)判決を求め、控訴審で争った事例

Promptu Systems Corp.(以下「Promptu」)(原告)は、ケーブルテレビとビデオデリバリを組み合わせた音声認識サービス方法に関する2件の特許(7,047,196/7,260,538)(以下それぞれ「196特許」、「538特許」)を保有し、2016年に両特許の侵害容疑でComcast Corp(以下「Comcast」)をペンシルベニア州東部地区地裁に提訴した。裁判では、196特許と538特許に加え、Re44,326(以下「326特許」)の特許侵害も争われ、Promptuは州法による侵害救済を請求した。提訴を受けたComcast(被告)は、196特許と538特許に対し、6件のIPRと2件のビジネスモデル特許レビュー(CBM)を申請し、2件のIPR決定については、CAFCに控訴された。

地裁は、IPR/CBMの開始が決定されたため、この訴訟は、2018年7月から2020年9月まで中止された。2022年5月に連邦地裁はクレーム解釈命令を出し、2022年6月に連邦地裁はクレーム解釈を説明する覚書を出した。地裁は、クレーム解釈命令に対する被告Comcastの用語解釈を採用した。その後、両当事者は、326特許の侵害訴訟と州法上の請求訴訟を取下げた。原告は、196特許と538特許についても、非侵害の判決を求めるモーションを提起し、地裁はそれを認めて非侵害を判決した。原告はCAFCに控訴し、判決の根拠となったクレーム中の用語解釈に誤りがあると主張した。

CAFCは、地裁のクレーム解釈に誤りがあったと認定し、地裁判決を破棄し事案を差戻した。その理由は、「back channel」「multiplicity of received identified speech channels」「speech recognition system coupled to a wireline node」「centralized processing station」の用語解釈が過度に狭く解釈されていたため、クレーム解釈を訂正し再審理するよう地裁に事案を差戻した。

本件の係争特許は特許庁で多数の無効手続き(IPR/CBM)に服し、2件の控訴審がCAFCに上がっている。判決文では具体的に触れられていないが、クレーム解釈についてCAFCが何らかの定見を持っていたことは明らかである。原告が地裁で争うことを断念し、CAFCで争う戦略を選択した背景にはそのような事情があったのであろう。