CAFC判決

CAFC判決

Princo Corp. 対 International Trade Commission事件

No. 2007-1836,2010,11,30-Aug-10

パテントプールに掲載する特許の重要性,この事件は、パテントプールにエッセンシャルでない特許、即ち標準化技術以外の特許が含まれている場合、抱き合わせの違法なライセンスの疑いが生じるので、パテントプールにリストする特許は厳選することが必要なことを教えてくれました。

パテントプールに掲載する特許の重要性

この事件において、CAFCの裁判官10名全員は、六つの米国特許の特許権侵害に関してプリンコ(Princo Corp.)の訴えを退け、フィリップス(U.S. Philips Corporation)を勝訴とした国際貿易委員会(以下、ITC)の審決を支持した。

争点の特許は全て、書込型コンパクトディスク(CD-R)及び書換型コンパクトディスク(CD-RW)に関する。これらの技術は、オレンジブック規格として知られている一連の規格に記載されている。主にソニーとフィリップスがオレンジブック規格を開発し、その開発中に、ディスク上でどのように位置情報を符号化するかに関する課題が生じた。

ソニーとフィリップスはそれぞれ、各自の特許権で保護されている解決策を有していた。最終的にフィリップスの解決策が普及し、ソニーの解決策はオレンジブック規格には盛り込まれなかった。

それにもかかわらず、ソニーとフィリップスは、企業がオレンジブック規格を遵守するために必要なライセンス供与のため、特許権のプールを作り上げた。このプールには、位置符号化に関するソニーの採用されなかった方法を保護する特許権も含まれていた。

プリンコはフィリップスからこの特許権のプールのライセンスを受けていたが、契約書に署名してすぐ、ライセンス料の支払を停止した。結果として、フィリップスは、フィリップスの六つの特許権侵害を主張し、ITCに提訴した。

ITCにおいて、行政法判事(以下、ALJ)は六つの特許権全ての侵害を認めたが、特許権濫用のために決定を取り消した。プリンコは、ALJに対しフィリップスのプールの仕組みは、規格の遵守に必要な特許権以外の特許権をも含むライセンスをプリンコに強要するものであったとする主張に成功した。

ALJは、追加的な特許権に関してフィリップスが「違法な抱き合わせの協定」に関与しているとした。ALJはまた、価格操作、価格決定及び取引制限に基づき、特許権は行使不可能であるとした。

再審理において、ITCは「違法な抱き合わせの協定」に基づく特許権濫用に関するALJの決定を支持したが、価格操作、価格決定及び取引制限に関するALJの認定については扱わなかった。

最初の審理において、CAFCはITCの決定を棄却し、たとえ追加的な特許権に係る費用が「不必要」であったとしても、それは規格を遵守するためのフラットなラインセスであるので、このようにフィリップスが特許実施権をひとまとめにすることは許可されていたと裁定した。

ITCが価格操作、価格決定及び取引制限に関するALJの決定を再審理しなかったので、CAFCはさらなる審理のために事件を差し戻した。

差し戻し審において、ITCは、この特許権のプールがフィリップスと競合他社の価格操作への関与を可能にしたとするプリンコの見解を裏付ける証拠はないと認定した。特に、ITCは、オレンジブック規格には不必要なソニーの特許権を含めたことは、違法な抱き合わせであったとするプリンコの主張を退けた。

ITCは、時に抱き合わせられた特許権は反競争的であると認める一方で、そのようなプールはまた、「抑止特許の除去、補足的な技術の一体化、訴訟回避」により「競争促進的」でもありうるとし、ソニーの特許権がオレンジブック規格に含まれることが妥当とされたことで、ITCは特許権濫用を認定しなかった。

二度目の控訴審において、CAFCは、再びプリンコの違法な抱き合わせに関する主張を退けた。しかしながら、CAFCの合議体は、ソニーの特許権を含めたことが代替技術の発展を妨げる意図的な企てであったか否かを検討するためにITCへと差し戻した。

合議体のうち一人の裁判官は、ソニーはその技術を普及させることができなかったので、以下の事実記録は明らかにソニーの特許権がオレンジブック規格と競合しないことを示していると言及し、反対意見を表明した。

CAFCは全体で、ソニーとフィリップスがソニーの特許技術を隠蔽するために共謀したと仮定すると、それが特許権濫用を生じさせる行為の一種であるか否かという争点を検討するために大法廷での審理を聴聞することにした。

大法廷の判決において、CAFCは、特許権者がクレームされた発明より広い独占権を得ることを禁止するために、司法上制定された理論である特許権濫用の過程をたどることから始めた。

判例法を審理した後、CAFCは、特許権濫用の理論は、特許権者がライセンスを得るための条件として、特許されていない製品の購入を要求する場合に、もっとも一般的に行使される狭義な例外であると認定した。

多数意見では、特許権濫用の理論に対する五つの例外を記載した、米国特許法第271条(d)を強調し、特許権濫用における連邦議会の任務も言及された。この事件に対して例外は適用されないが、CAFCの多数意見は、特許権濫用と認められない特許権の使用について指摘することで、この規則を特許権濫用の理論を限定するものと解釈した。従って、CAFCは、連邦議会が特許権濫用理論の無限の性質に関りがあると論じた。

手元の事実へ法律を適用することで、CAFCは、この事件の争点を反競争的理由のために隠蔽された特許権が、パテントプールに含まれる他の特許権に対する侵害行為を無効とする特許権濫用の認定を裏付けることができるか否かに定めた。

CAFCは、この事件で主張された濫用はソニーの特許まで拡大するものではなく、特許権濫用の認定を裏付けるものではないとした。実際、多数意見では、フィリップスが特許権濫用の状況においてソニーの特許権を「行使」しなかったことが明らかにされた。

最後に、多数意見は、プリンコがライセンスのプールの反競争的な効果を裏付ける適切な証拠を提出できなかったと認定した。更に、CAFCは、プリンコが取引制限に関する独占禁止違反を立証したか否かを審理したが、プリンコの主張を裏付ける証拠は発見されなかった。

プリンコ事件は、特許権濫用の理論に関するCAFCの支配的な事件である。CAFCの多数意見は特許権濫用が狭義な議論であるとしたが、少なくとも何人かの賛同する裁判官と異議を唱える裁判官はより発展的な見方をした。従って、企業は、ライセンスのプールの中に余分な「必要でない」特許権を加えることの潜在的なリスクに注意しなければならない。

Key Point?特許プールにエッセンシャルでない特許、即ち標準化技術以外の特許が含まれている場合、抱き合わせの違法なライセンスの疑いが生じるので、パテントプールにリストする特許は厳選することが必要である。