CAFC判決

CAFC判決

Powertech Technology Inc. 対 Tessera, Inc 事件

No. 2010-1489,2011,12,30-Sep-11

この事件の決定から、特許権者がそのライセンス許諾を受けている製造者の顧客を訴える場合に、無効および非侵害についてライセンシーである製造者自身により確認判決の訴えを起こされるリスクがあることが示されました。

この事件は、テセラ(Tessera, Inc)の有する特許の非侵害および無効の宣言を求める原告パワーテック・テクノロジー(Powertech Technology Inc.以下、PTI)による確認判決の申立をカリフォルニア州北部地方裁判所が却下したことに対する控訴事件である。

テセラの有する特許は、露出した半導体チップの端子の「封止」中の汚染を防ぐ方法を対象とした。封止は、成型プラスチックで囲むことによって、半導体チップを機械的および熱的な損傷から防ぐ処理である。クレームされた処理は、チップを囲む領域に注入される場合に、封止部材がチップの端子と接触するのを防ぐ保護バリアを伴う。

PTIは半導体産業の様々な顧客のためにチップをパッケージ化する台湾の下請会社である。PTIの顧客はPTIへむき出しのチップを送り、PTIはそのチップを保護部材で封止し、その後パッケージ済チップを顧客へ返した。

次いで、この顧客は世界中で販売するためにプレパッケージ済チップを電子装置へ組み込んだ。この販売には米国への輸出が含まれる。2003年に、PTIはテセラの有する特許のライセンス許諾を受け、販売後の四半期ごとに使用料を支払うことを合意した。

確認判決を求める訴えは少なくとも2つの既存の訴訟、すなわちテキサス州東部地区地方裁判所のものと米国国際貿易委員会(ITC)のものとにおけるテセラの陳述が元になった。

テセラは所定のチップの輸入および販売について18の被告に対して4つの特許権を行使した。この被告の一部はPTIの顧客であった。この争いは、(1)PTIの訴訟に伴う特許は3つの先行技術文献に対して新規性を有さず、(2)いわゆるwBGAチップは非侵害であり、(3)PTIを含むライセンス許諾を受けた下請会社からその製品のすべてを購入したので、被告によるいわゆるμBGAチップの販売は有効な特許権消尽の抗弁により保護される(注)、としたCAFCの先例の判断に至った。この先例はその後ITCへ差し戻された。

ITCの訴えは進行中であったが、PTIは、ライセンス済みの特許を自身の製品が侵害しないと信じながらも、wBGAチップに対する使用料をテセラへ支払った。

直後の2010年3月5日に、PTIは訴訟上の救済のために2つの請求を求める確認判決の訴えを提起した。第1に、wBGAチップがライセンス済みの特許を侵害しないという宣言を求めた。しかしながら、μBGAチップに対して同様の宣言はなされなかった。第2に、PTIは特許が無効であるという宣言を求めた。

ここで重要なことは、この無効の抗弁は以前の訴訟で提出されたものと同じ先行技術に基づくものではなかったことである。そのかわりに、係属中の特許のUSPTOによる再審査手続中に生じた先行技術に基づいていた。これに応じて、テセラは事物管轄権の欠如による却下を申立てた。

テセラは、使用料を支払うことによってPTIが健全な状態のライセンシーに留まる限り、消尽原則の下で保護されるPTIの顧客に対してITCおよびテキサス州裁判所は裁判にかけられるべき争点を作れないと主張した。

テセラはまた、PTIが特許の有効性または権利範囲を攻撃せず、被疑品のwBGAチップおよびμBGAチップを対象とする「TCCライセンス済製品」という用語の客観的定義を攻撃しているので、特許が無効または非侵害であることがわかったとしても、ライセンス合意の下でPTIの使用料支払いの義務は続き、争点は存在しないと主張した。

地方裁判所はこの主張に同意し、さらに職権により、現実の争点が存在したとしても、司法の効率性から係属中のテキサス州の訴えに沿って確認判決の訴えを審理することが好ましいと判断した。

CAFCは、地方裁判所の判断を全く参考とせずに、事物管轄の欠如による却下を審理した。最高裁判所によるMedImmune, Inc. 対 Genetech, Inc.事件の確認判決の原則の下では、相対立する当事者間に「実質的な争点」が存在する場合に、訴えの利益または争点が存在する。

MedImmune, Inc. 対 Genetech, Inc.事件の後に、Arris Group Inc. 対 British Telecommunications PLC事件(Fed. Cir. 2011)においてCAFCはサプライヤの機器の販売または使用に基づいて特許権者が顧客を直接侵害で訴える場合に、顧客による直接侵害の実施に基づいて誘導侵害または寄与侵害についてのサプライヤの責任に関して特許権者とサプライヤとの間で争点が存在するならばサプライヤは確認判決の訴えを開始する適格を有すると判断した。

CAFCは次いで、この事件について、無効または非侵害の特許についてPTIが使用料を支払う必要があるかに関するライセンス合意において契約解釈問題が存在するので、法的争点が存在すると判断した。

最高裁判所はMedImmune, Inc. 対 Genetech, Inc.事件において、契約の問題は実体上の問題であり、事物管轄の欠如についての却下の申立てに関する決定には適さないことを明確にした。

CAFCは最後に、司法の効率性の利益から係属中の訴訟に並行する確認判決の訴えを審理するためにテキサス州裁判所へ移管することが好ましいという理由で地方裁判所が職権でこの事件の審理を拒否したことは裁量権の濫用であると判断した。

CAFCは、(カリフォルニア州についての)ライセンス合意における管轄約款は有効と思われ、尊重されなければならないと判断したのである。

この事件の決定から、特許権者がそのライセンス許諾を受けている製造者の顧客を訴える場合に、無効および非侵害についてライセンシーである製造者自身により確認判決の訴えを起こされるリスクがあることが示された。

Key Point?この事件の決定から、特許権者がそのライセンス許諾を受けている製造者の顧客を訴える場合に、無効および非侵害についてライセンシーである製造者自身により確認判決の訴えを起こされるリスクがあることが示された。