CAFC判決

CAFC判決

Palm Bay Imports, Inc. 対 Veuve Clicquot Ponsardin Maison Fondee En 1772事件

2005,7,2005年2月9日 CAFC判決

スパークリングワインにVEUVE ROYALEの商標を使用することは、異議申立人であるVeuve Clicquot Ponsardin (以下、VCP)が所有する2つの商標との間に混同のおそれがあると判断した、米国特許商標庁の商標抵触審判部(以下、審判部)の認定に同意し、審判部による登録拒絶の判断を支持する判決を下した。この事件は、商標の類比判断における顧客及び潜在的な顧客の役割に関するものである。一般消費者と比較して実際の顧客及び潜在的な顧客の大部分が、ある商標について出所を表示するものとして認識するならば、その商標は混同のおそれに関する分析に基づいて、十分に有名であると判示された点で注目すべきである。またこの事件は、外国語の意味に基づいて混同のおそれの有無を決める原則の有効性を再確認させた。

商標の類比判断における顧客及び潜在的な顧客の役割について

2005年2月9日、CAFCは、スパークリングワインにVEUVE ROYALEの商標を使用することは、異議申立人であるVeuve Clicquot Ponsardin (以下、VCP)が所有する2つの商標との間に混同のおそれがあると判断した、米国特許商標庁の商標抵触審判部(以下、審判部)の認定に同意し、審判部による登録拒絶の判断を支持する判決を下し、第3のVCPの商標に関しては、混同のおそれに関する審判部の認定を棄却した。

1998年、Palm Bay Imports, Inc. (以下、”Palm Bay”)は、VEUVE ROYALEという商標をスパークリングワインに使用するために、ランハム法第1項、15USC§1051(b)による、使用意思に基づく商標出願を提出した。

VCPは、自社の5つの商標に基づき混同のおそれを主張して、その出願に対し審判部に異議申立した。審判部は、VCPの商標のうち、(1)VEUVE CLICQUOT PONSARDIN, (2)VEUVE CLICQUOT, 及び(3)THE WIDOW の3つの標章との間に混同のおそれがあると認定し、Palm Bayの商標の登録を拒絶した。

混同のおそれの認定をする上で、CAFCは、In re E.I. DuPont DeNemours & Co.事件, 476 F.2d 1357, 1362 (C.C.P.A. 1973) において挙げられた13個の要素を適用したと述べた。控訴審における争点では、DuPontの要素の4つが適用された。それは(1)商標の類似性、(2)第三者によるVEUVEという文言の使用、(3)VCPの商標の知名度、(4)購入者、の素養である。

CAFCが検討した第1の要素は、「『外観、称呼、観念、及び商業的印象』に関する商標全体としての類似性・非類似性」(DuPont事件判決, 476 F.2d at 1361)に関するものである。

控訴審において、Palm Bayは、審判部が「商業的印象」を個々の要素の一つとしてではなく、類似性の項目における最終的な結論として扱ったことは、取消対象となる誤りであると主張した。

CAFCは、審判部が基準を間違えて言い換えたと述べる一方で、審判部の別の方法による詳細な分析における誤りを見つけることができなかった。

さらに、CAFCは、「商業的印象」という語句は、先例となる連邦裁判所判決において商標の類似性に関する最終的な結論として用いられていたと述べた。

CAFCは、CLICQUOTよりもVEUVEの方がVCPの商標の顕著な部分であるとした審判部の認定は誤りであるというPalm Bayの主張も退けた。VCP自身が認め、販売製品において一貫して使用していることによって立証されているように、CLICQUOTはVCPの商標の要部であると認める一方で、CAFCは、VEUVEにはVCPの商標の顕著な特徴が残されていると認定した。

なぜなら、VEUVEもVCPの広告に一貫して使われており、会社の由来に関係するものであったからである。

さらに、この識別性のある部分は両者の商標における最初の単語であることから、互いの商標の類似性は高まることになる。結果として、類似性に関する第一の争点について、CAFCは、DuPont事件判決における要素につき混同のおそれを示しているという審判部の認定を支持した。

Palm Bayによって異議を唱えられた第2の要素は、「類似商品に使用されている類似商標の数と性質」(DuPont事件判決467 F.2d at 1361)を包み、商標の強さに関するものである。

この要素についてもVCPに有利な判決を下す上で、CAFCは、VEUVEという文言を使用している5つの異なるアルコール飲料が、業界紙上に登場している事実を重視することを拒絶した。

CAFCは、業界紙は、「VEUVEという文言が他のアルコール飲料に使用されていることに業者が気付いていたという点で説得力を有する証拠であるが、消費者が同様に気付いていたとの証拠とはならない」と述べた。

VEUVEという文言を第三者も使用していたことに消費者が気付いていたという証拠は無い。

さらに、CAFCは、Palm Bayが証拠として提示したVEUVE DE VERNAYという商標を使用して販売されていたある競合するスパークリングワインについて関心を示さなかった。

なぜならば、第三者の要素は、顧客が識別可能な類似商標の氾濫によって混乱していることを示すことを要件としていたからである。

CAFCはさらに、商標の知名度に関するDuPont事件判決における要素は、混同のおそれの認定をサポートするものであると認定した。

この要素は重要であり、混同のおそれの分析における知名度は、商標が米国全人口の中で広く公に認識されているかどうかによって判断されるものではなく、混同のおそれの分析における知名度を計る基準は、商品を購入する一般大衆、すなわち顧客及び潜在的な顧客の大部分が商標を出所の表示として認識するかどうかである。

この基準をVCPの商標に適用し、VEUVE CLICQUOTシャンパンの販売の大成功を考慮すれば、VCPの商標の知名度は十分に立証されているとCAFCは認定した。

CAFCは、争点における第4の、そして最後の要素である購入者の素養、すなわち購入者に混同のおそれの分析における商品を見分ける力が殆ど無い場合に関する審判部の決定に同意し、Palm BayのVEUVE ROYALEはVCPのVEUVE CLICQUOT PONSARDIN及びVEUVE CLICQUOTと混同を生ずるほど類似していると結論付けた。

しかしながら、VCPの第三の商標であるTHE WIDOWに関しては、CAFCは審判部による外国語の意味に基づく混同のおそれの認定を覆した。この原則の下では、米国人購入者が英語に訳す可能性が高い外国語が持つ意味は、混同のおそれの要素の一つに含まれることになる。

この原則を審判部が適用したことには矛盾があると認定し、CAFCはさらに、一般的な米国人購入者が「VEUVE」を「widow(未亡人)」に訳す可能性は低いと認定した。

この事件は、一般消費者と比較して実際の顧客及び潜在的な顧客の大部分が、ある商標を出所を表示するものとして認識するならば、その商標は混同のおそれの分析に基づいて十分に有名であると判示された点で注目すべきである。またこの事件は、外国語の意味に基づいて混同のおそれの有無を決める原則の有効性を再確認させた。