CAFC判決

CAFC判決

Oyster Optics LLC 対 Infinera Corp. 事件

CAFC No.2019-2179,2021,2,11-Feb-21

本件は特許侵害訴訟であり、過去の和解契約により同一特許の特許ライセンスを取得するとともに和解契約発効前の侵害行為も免責されていた企業を、被告が和解契約の発効後に買収していた事案である。本件においてCAFCは、和解契約の文言に基づき、被告に対する遡及的な特許ライセンスを認めた。

和解契約によりライセンスを取得した企業を事後に買収した企業にも遡及的にライセンスを認めた判決

Oyster Optics, LLC(以下「Oyster」)は、電気通信のシステムと方法に関する複数の特許を所有していた。2016年、Oysterはテキサス州東部地区地裁において、Coriant (USA) Inc.、Coriant North America、及びCoriant Operations, Inc.(以下「Coriant」と総称)、並びにInfinera Corporation(以下「Infinera」)を含む複数の企業を相手に複数の特許侵害訴訟を提起した。地裁はこれら複数の訴訟を併合して審理した。

それから約2年後、OysterとCoriantとの間で和解が成立した。和解契約により、OysterはCoriant及びその関係会社(Affiliates)に対して、係争特許を含む複数の特許のライセンスを許諾した。加えて、OysterはCoriant及びその関係会社(Affiliates)に対して、和解契約の発効日(2018年6月27日)以前になされたライセンス対象特許の侵害行為を免責した。和解契約において、「関係会社(Affiliates)」とは、「現在又は将来において」Coriantの支配権を持つ者であると定義され、また、「支配権」とは過半数の議決権を含むと定義されていた。

この和解契約が成立する前にOysterは、Infineraを相手に、併合訴訟における係争特許とは別の特許(この特許もOyster-Coriant間の和解契約の対象に含まれていた。)に基づく追加の特許侵害訴訟を提起していた。地裁は、この追加の訴訟と先の併合訴訟のうちのInfineraに対する訴訟とを併合して審理した。

Oyster-Coriant間の和解契約の成立後の2018年10月1日、InfineraはCoriantを買収した。そして、自身が第三者受益者として和解契約に基づくライセンスと過去の侵害免除の特権を享受できるとの略式判決を求めるモーションを提出した。地裁は、そのモーションを認め、Infineraに対してライセンスと過去の侵害行為の免責を認める略式判決を下した。OysterはCAFCに控訴した。

控訴審においてOysterは、和解契約の発効日よりも後にCoriantの関係会社(Affiliates)となったInfineraには、和解契約に基づく過去の侵害行為の免責が適用されないと主張した。加えてOysterは、Infineraにはライセンスも認められないし、仮に認められるとしても、通常はライセンスは不遡及(prospective)であるので、ライセンスでカバーされるのはCoriantの買収よりも後に行われた侵害行為に限定されると主張した。

Oysterの主張に対し、CAFCは、ライセンスが「一般的には(generally)」不遡及であることを認めつつ、本件に関しては、前述した和解契約の文言にしたがって、InfineraはCoriantの関係会社(Affiliates)となった時点で遡及的(retroactive)なライセンスを取得したと判断し、地裁の判決を支持した。