米国最高裁はこの判決で、特許権は公権であり公権をアメリカ合衆国憲法で定める3条法廷や陪審裁判において裁く必要はないから、IPRがアメリカ合衆国憲法の第3条に反することも、同修正第7条に反することもないと判じた。この判決により、少なくとも当分の間はIPR手続きが存続することなる。
IPRを合憲とした米国最高裁判決
米国最高裁はこの判決で、2011年の新米国特許法(America Invents Act、「AIA」)によって創設された米国特許商標庁における当事者系レビュー(「IPR」)手続きが、アメリカ合衆国憲法の第3条または修正第7条に反するか否かの問題を扱った。最高裁の多数は、特許権は公権であり公権を憲法3条が定める法廷や陪審裁判において裁く必要はないから、IPRが第3条に反することも、修正第7条に反することもないと判じた。特許の実務家は長らくこの判決を待ち望んでいた。これは、そのような判決が、米国特許権の行使のランドスケープに、これまでの流れを変えるような影響を与えうるからである。しかしながら、この判例により、最高裁はIPRIPR手続きについて従来通りのままで有り続けるであろうことを保証した。Oil States Energy ServicesおよびGreene’s Energy Groupは油田サービス企業である。2001年、Oil Statesは水圧破砕で用いられる油田口装置を保護する装置および方法についての特許権を取得した。Oil Statesは2012年に特許権侵害でGreene’sを訴え、Greene’sはその後、行使された特許権に対するIPRを2013年に提出した。IPRにおいて、特許審判部(「PTAB」)は最終的に、対象の特許請求項は適用された従来技術によって予測されたものであり、したがって特許できるものではないと判じた。CAFCへ控訴したものの不成功となり、その後、Oil Statesは米国最高裁へ上告した。最高裁はその訴えを受理し、非3条主体であるPTABに発行済み特許権を無効化する権限を与えている点で、IPR手続きが陪審裁判の第3条権利または修正第7条権利を侵すか否かの問題を扱うこととした。
最高裁の判決において、Thomas判事は、「当事者系レビューはまさに公権の法理に当てはまるものであ」り、したがって発行済み特許権の有効性に関する付与後の判断は3条法廷や陪審裁判においてなされる必要はないと判じた。Thomas判事は、憲法第一条は議会に特許を付与する権能を与え、次いで議会は米国政府の行政部門(PTOおよびPTABはその一部である)がその権力を実行することを認めていると論じた。Thomas判事はさらに、特許権の付与を、他の「公的特権」の付与、例えば有料橋や線路や電信線を建設する権利、と類似のものであるとした。過去に最高裁判所は、政府が立法や行政手続きを通じてそのような権利を取り消したり与えたりすることができると判じている。したがって、最高裁のこの判決は、少なくとも当分の間はIPR手続きが存続することを示している。しかしながら、最高裁判所は、その判決が狭いものであり、AIA前の特許権を含むPTAB手続きに関連付けられたいかなる遡及的問題を解決するものではなく、また他の法的手続きに対する争いを解決するものでもないと強調した。したがって、将来、IPR手続きのある側面に対する他の憲法的な争いが現れても不思議ではない。
情報元:
Michael P. Sandonato
Brian L. Klock
Venable LLP