CAFC判決

CAFC判決

Nippon Shinyaku Co., Ltd. 対 Sarepta Therapeutics Inc.事件

CAFC No. 21-2369,2022,2,8-Feb-22

不争契約の対象範囲が争われた事件で、不争契約の範囲に関し、警鐘を鳴らしている。不争契約の規定は訴訟のみならずIPRも含み、デラウエア州において特許紛争を解決すべきであるとして元契約当事者が請求したIPRの取り下げを命じた。

日本新薬とSarepta Therapeuticsは、「デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療法の事業化のための協同研究」に関する契約を締結した。契約書には「不争条項」と「裁判地指定条項」が含まれており、当事者は契約期間中、他当事者に対してDMD分野での知財権に関するいかなる民事訴訟の提起も、行政処分の請求もできない。契約書には、具体的に、特許侵害訴訟、確認判決訴訟、米日特許庁での無効審判や再審査手続きを禁止項目として例示していた。また、契約終了後に生じた当事者間の知財紛争については、デラウエア州にだけ裁判管轄が認められることが規定されていた。

協同研究契約が2021年6月に終了すると、Sareptaは直ぐにUSPTOに7件のIPRを申請した。それに対して日本新薬は、①PTOに対するIPR申請は契約の裁判地指定条項の違反、②Sarepta特許の非侵害と同特許の無効、③Sareptaが日本新薬の特許に侵害すること―の確認を求めてデラウエア地裁に提訴した。さらに、IPR停止を求めるモーションを申し立てた。

デラウエア地裁は、日本新薬が求めるIPR停止のモーションを退けた。モーションが、実質的に仮差止め(preliminary injunction)を求めるものであり、判例に基づく仮差止めの認定のための4要素を満たしていないという理由からである。日本新薬はこの決定を不服としてCAFCに控訴した。

CAFCは日本新薬の主張を認め、デラウエア地裁に対しIPRの取り下げを命じる差止命令をSareptaに出すよう命じた。当事者間の契約の裁判地指定条項において、契約終了後2年間、すべての特許紛争をデラウエア州において解決すべきであることは契約書から明らかなためである。

(注:この事件は、IPRが裁判所での訴訟と同等の性格をもつことを明らかにしている。また、国際契約を締結する際、「性善説」は通用しないことを教えてくれている。)