CAFC判決

CAFC判決

Nature Simulation Systems Inc. 対 Autodesk, Inc.事件

CAFC No. 20-2257,2022,1,27-Jan-22

CAFC は、クレームの記載事項だけでクレーム解釈した地裁の誤審を指摘し、明細書、審査経過、その他の関連証拠を参照して、クレームの明確性を判断すべきであると判示した。

Nature Simulation Systems, Inc. (NSS) は、USP 10,109,105とその一部継続特許USP 10,120,961を保有する。両特許はデータ構造やアルゴリズムに関する。3次元の幾何学形状を分析・表現するために1981年に発表された有名な「ブール演算」(「Watson方法」)を改変した演算方法に使用されるものである。NSSは、被告のAutodeskが両特許を侵害したとしてカリフォルニア州北部地区地裁に訴訟を提起し、961特許のクレーム1及び8と105特許のクレーム1の特許侵害を主張した。

Autodeskは、マークマン・ヒアリングにおいて、NSSがクレームの文言の定義を行うべきであると主張した。NSSはそれに直接には対応せず、明細書に記述されていると回答した。地裁は、用語の定義をクレームに記載すべきであると判断し、記載不備(特許法112条(b))を理由にして両特許の無効を判決した。NSSはその判決を不服として、CAFCに控訴した。

先ず、考慮しなければならない背景には以下のものがある。

クレーム解釈は法律問題であり、CAFCは最初から見直せる。

クレームが不明確であるかどうかは、その特許(発明)の分野の当業者の観点から決定されるものである。第一審の地裁と原告・被告の両当事者は、この特許に関する当業者のレベルを、コンピュータサイエンス及びその関連分野で少なくとも修士レベル、あるいは学卒では少なくとも2年以上の経験者とした。

また、米国特許は、特許法によりその特許の有効性が推定されている。

地裁のマークマン・ヒアリングにおいて、Autodeskは、クレーム中の8つの文言の解釈を求めた。NSSは、それらは明細書に明確に記載されているので、この分野の通常の意味で理解されるべきであると回答した。

しかし、地裁は、明確性はクレームの問題であるので、明細書では明確であっても、クレームの中で、明確でなければならないとして、8つの中の2つの文言が不明確であるとの理由で、特許を無効にした。

しかし、CAFCは地裁の判決に誤りがあるとして、地裁判決を破棄した。CAFCはその理由を以下のように述べた。特許クレームの解釈に際し、明細書、審査経過、その他の関連証拠の記載を考慮するのは、クレームされた発明の範囲を、当業者が合理的な確実性をもって知ることができるようにするためである。本件特許は、1981年に三次元の幾何学的形状の分析と表現のためにWatson/Delaunayによって発表されたブーリアン演算(Boolean operation)の改良である。一般的なアプローチが公知技術として確立していて、特許の中でそのことに言及されている場合には、判例上、特許クレームは記載不備にならない(Presidio Components, Inc. vs. Am. Tech. Ceramics Corp., CAFC, 2017))。

また、審査過程を見ても、発明の実施可能性、ベストモードの問題は提起されていない。また、審査官は、補正されたクレームは公知技術を差別化し、特許の主題を正しく特定していることを認めている。これらに対して、地裁は疑問を提示していない。従って内的、外的な証拠の観点からCAFCは地裁の判決を取り消した。

なお、このCAFCの判決に対して、判事のDYKは、審査の過程で不明確な文言がクレームに追加されたことで、クレームと明細書の記載の不一致を理由に、特許無効の地裁判決を支持した。