CAFC判決

CAFC判決

Mylan Lab., Ltd. 対 Janssen Pharmaceutical, N.V. 事件

No. 2021-1071,2021,3,12-Mar-21

この事件は、IPRを開始しないとの決定そのものについては控訴できないが、その決定に対する上級裁判所による「救済執行命令」(mandamus relief)の請求はCAFCが審理すべき事項であるとされた事例である。

IPRを開始しないとの決定そのものは控訴不能であるが、その決定に対する救済執行令状(mandamus relief)の請求については必ずしも控訴不能ではないとされた事例

Janssenは所有する特許(9,439,906)が侵害されたとしてMylanを特許侵害で訴えた。Mylanは直ぐに同特許のIPRをPTABに申請し、特許法103条(新規性)にもとづく特許無効を主張した。これに対してJanssenは、同特許をめぐる侵害訴訟がTevaとMylanを相手取り2件係属中であり、裁判所の特許性判断がIPRの最終審決の前に出されるので、改めてIPRを開始することは非効率であると主張し、IPRの開始に反対した。

PTABはJanssenの反対意見を受け容れ、IPOを開始しない決定を下した。Mylanはその決定を不服としてCAFCに控訴し、併せてCAFCがPTABに対しIPRの開始を命じる「救済執行命令」(mandamus relief)を発令することも求めた。

CAFCは、まずCAFCがこのPTAB決定に対する控訴の管轄を有さないことを確認した。すなわち、特許法第314条(d)によりIPR開始の決定には控訴できないこと、その他CAFCが本件を扱うこと認める規定は存在しないことを確認した。②の救済執行命令の発令については、CAFCにはその問題を審理する権限があることを認め、その場合には、他に救済の方法がないことなど、その発令を求めることの高いハードルを立証義務があることを明らかにした。

この判決は、IPR開始の決定に対して特許法上では控訴できないが、非常な手段として「救済執行命令」の観点からの控訴の余地があることを明らかにした判決である。

しかし、この事件では救済執行命令の発令は認められなかった。