CAFC判決

CAFC判決

Medtronic, Inc. 対 Boston Scientific Corp. 事件

Nos. 2011-1313, -1372,2012,12,18-Sep-12

この事件では、原告が非侵害の確認訴訟を提起しましたが、原告との間のライセンス契約により、被告が侵害に関する反訴の主張ができないという特殊な状況において、CAFCは確認訴訟の原告が非侵害の立証責任を負うことを明らかにしました。

メドトロニック(Medtronic)事件において、原告が非侵害の確認判決を求める訴訟を起こしたが、原告が被告から特許権のサブライセンスを受けているために、被告が侵害に関する反訴の主張を行うことができない場合には、原告が非侵害を立証する責任を負うことをCAFCは明らかにした。

メドトロニック(Medtronic, Inc.)は、MFV(Mirowski Family Ventures, LLC)が所有する特許権の非侵害及び無効の確認判決を求める申立を提出した。争点となっている特許権は、患者の左右両方の心室を心拍と同時に収縮させるようにすることにより心臓の効率を上げる心臓再同期療法機器として知られる装置に関する。

メドトロニックは、争点となっている特許権の利害関係人との間で、確認判決訴訟によってメドトロニックが有効性、権利行使可能性及び特許権の範囲について異議を申し立てることを認めるサブライセンス契約を締結した。サブライセンスの規約に基づき、メドトロニックは第三者供託でロイヤリティの支払いを開始し、その一方で特許権のうちの一つの有効性に異議を申し立てた。

当事者は、MFVがその特許権によって保護されていると考えているメドトロニックの製品を、メドトロニックに報告するようMFVに義務付ける訴訟停止契約(litigation tolling agreement)を結んだ。

見解が相違した場合、訴訟停止契約はメドトロニックにライセンスを保持する権利を認める一方、裁判の中で確認判決を求めることをメドトロニックに義務付けていた。2007年に、MFVは、MFVがその特許権を実施していると考えるメドトロニックのいくつかの製品を特定した。訴訟停止契約に従い、メドトロニックは確認判決訴訟となる訴訟を提起した。

ひとつの重要な事実は、メドトロニックがMFVのライセンスを保持していたために、MFVはどの特許権についても侵害に関する反訴ができなかったという点である。

訴訟全体を通して、両当事者は、特許権者として被告が侵害の立証責任を有しているのか、若しくは原告としてメドトロニックが非侵害の立証責任を有しているのかに関して意見を異にした。

一般的に、確認判決訴訟において、被告は侵害に関する反訴または永久に権利を失うことのリスクを主張しなければならない。しかしながら、MedImmune, Inc.対 Genentech, Inc.事件549 U.S. 118 (2007)での最高裁判決に基づき、原告が被告の特許権についてサブライセンスを保有している場合には、被告は侵害に関する反訴の主張を行うことができない。

審理において、地方裁判所は、侵害の立証責任は常に特許権者にあり、故に被告が証拠の優越により立証責任を有すると判断した。そして地方裁判所は被告の専門家は争点となっている製品と関連するクレームの全ての限定を対応付けなかった、故に被告は文言侵害を証明しなかったと判断した。

控訴審において、CAFCは訴訟全体に亘る同じ問題に直面した。それはすなわち、サブライセンス契約に準じて非侵害の略式判決を原告が求めているが、そのサブライセンス契約の存在により被告は侵害の反訴ができない場合の適切な立証責任の割り当てである。

被告は、被告に立証責任があると判断したことにおいて、地方裁判所は単純に(そして誤って)原告が特許権者である場合の従来の特許侵害事件に頼ったと主張した。被告は、メドトロニックが訴訟を始めたことを理由に、メドトロニックにはその事件を立証する責任があると主張した。一方で、メドトロニックは特許侵害の立証責任は常に特許権者にあると主張した。

CAFCは、この一方的な訴訟の提起者として、メドトロニックが非侵害の立証責任を有すると判断し、一般的に事件の現状を変更しようとし、それ故に自然と証拠または説得が失敗したときのリスクを負うべきと予期される当事者に責任は割り当てられるべきであると理由付けた。

ここで、メドトロニックはそのライセンスにより侵害に対する法的責任と無関係であり、そしてメドトロニックが求める救済はもっぱら且つ直接的にライセンスに基づく自身の義務に関係していた。従って、CAFCの論拠に基づき、メドトロニックが立証責任を有する当事者となる。

メドトロニック事件は、確認判決訴訟における被告が、原告との間に存在するライセンス契約のために侵害に関する反訴の主張ができないという特殊な状況に関する。そのような状況において、CAFCは確認判決の原告が非侵害の立証責任を負うことを明らかにした。

CAFC全体または最高裁判所による破棄がなければ、この判決は特許ライセンス契約の原案を作り締結する人々にとって重要である。ライセンサーが侵害の訴訟を提起できないようにするために、ライセンシーがライセンスを保有している場合には、ライセンサーは、ライセンス契約を免れるために表面上は、非侵害の立証をライセンシーに求める可能性があるからである。

Key Point?この事件では、原告が非侵害の確認訴訟を提起したが、原告との間のライセンス契約により、被告が侵害に関する反訴の主張ができないという特殊な状況において、CAFCは確認訴訟の原告が非侵害の立証責任を負うことを明らかにした。