この判決は、米国発明法(America Invents Act)により創設されたIPR(当事者系レビュー)が合衆国憲法に違反していないことを示した。従って、IPRは、当面の間、特許の有効性を攻撃する重要な手続きであり続けると考えられる。
米国発明法(America Invents Act)により創設されたIPR(当事者系レビュー)が合衆国憲法に違反していないことを確認した判決
PTAB(Patent Trial and Appeal Board)がいくつかのクレームを特許不可能と判断したことに対して、MCM(MCM Portfolio, LLC)は出訴し、IPR(当事者系レビュー)の手続きが合衆国憲法第3条に違反していると主張した。
合衆国憲法第3条は、連邦法の下で生じた紛争について判断する権限を米国裁判所に付与するものである。MCMはまた、IPRプロセスが、連邦裁判所において陪審による審理を受ける権利を定めた合衆国憲法修正第7条に違反していると主張した。CAFCは、最高裁判所の判例及び自身の先例に基づき、IPR手続の合憲性を支持した。
MCMの主張によれば、最高裁判所の判例は、米国特許は財産なので一度発行されるとそれを無効にできるのは第3条の連邦裁判所だけであるということを判示するものである。
具体的には、MCMは、財産権を無効にできるか否かに関する問題が裁判所の排他的管轄に含まれると判断した過去の最高裁判決に依拠した。MCMはまた、マコーミック事件(McCormick Harvesting Machine Co. v. Aultman, 169 U.S. 606, 608-609 (1898))にも依拠した。
この事件は、一度PTOが特許を発行すると、PTOはそれを無効にしたり取り消したりする管轄権を持たず、「特許を無効にしたり取り消したりする能力を持つ唯一の権限は、合衆国裁判所に与えられている」と判断した。
MCMは、PTOが特許を再審理する権限を支持したCAFCの過去の判決が、より新しい最高裁判決により覆されたと主張した。
過去の判決において、CAFCは、PTOが「公共の権利」に関係する紛争を審理することを議会が許可したことを認め、PTOによる特許の許可は公共の権利であると判断した。
MCMの主張によれば、最近の最高裁判決は、「公共の権利」が、主権において政府により伝統的に行われる行為に関係するものでなければならないことを明らかにするものである。MCMの主張によれば、合衆国の行政府や立法府は伝統的に特許を無効にしてこなかったので、この最高裁判決はCAFCの先例を覆すものである。
CAFCはMCMの主張を棄却し、最初に、特許権者が再発行特許出願を放棄した場合にクレームを無効にする権限をPTOに付与する有効な法律が当時は存在しなかったことに基づき、マコーミック事件を区別した。
マコーミック事件において、特許権者は、元の特許を残すために、係属中の再発行出願を取り下げた。そこで、最高裁判所は、元の特許は無効にされないと判断した。なぜなら、再発行に係る法律は、訂正特許が発行されて初めて元の特許の放棄が効力を発すると述べているからである。
再発行出願の放棄は、元の特許が有効なままであるということを意味するので、裁判所だけが特許を無効にすることができる。ここでは対照的に、CAFCは、米国発明法(America Invents Act)が、PTOが特許の審判を行うことを許可する法的権限を規定していると述べた。
CAFCはまた、特許が「公共の権利」であるとした過去の判決を維持し、それゆえ、議会が特許紛争の解決を政府機関に委ねることを許可した。
CAFCはまた、最近の最高裁判所の判例にも依拠した。この判例は、「公共の権利」の法理が適用されるのは、紛争が広範な連邦機関体制に由来する場合、または政府機関による申し立ての解決が機関の権限内の目的にとって基本的なものである場合であると判示している。
CAFCは、特許権が連邦法に従って与えられるものであり、PTOが特許を審査するのに適した専門政府機関であるので、2つの基準がいずれも満たされると判断した。
CAFCは、PTOが特許を発行する責任を持ち、自身の判断をPTOが再考することを許可する権限を議会が持っていると説明した。
MCMはまた、IPRプロセスが、合衆国憲法修正第7条の下での陪審による審理を受ける権利をMCMから奪うものであるとも主張した。合衆国憲法修正第7条は、「コモンローにおける訴訟において…陪審による審理を受ける権利が保護されている」と述べている。
CAFCは再度、過去の最高裁判決に基づき、IPRプロセスが修正第7条に違反しているという主張を棄却し、議会が、修正第7条に違反することなく、公共の権利に関して法律上生み出された問題の審判を行政機関に委ねることができると判断した裁判例を引用した。
CAFCはまた、修正第7条が行政手続きには適用不可能であると判断した当局に注目した。
MCMの判決は、当面の間、IPRが特許の有効性を攻撃する重要な手続きであり続けるであろうということを確認するものである。IPR手続において利用可能な権利及び手続きに対するいかなる修正も、議会またはPTOにより行われる必要があるであろう。
Key Point?この判決は、米国発明法(America Invents Act)により創設されたIPR(当事者系レビュー)が合衆国憲法に違反していないことを示した。従って、IPRは、当面の間、特許の有効性を攻撃する重要な手続きであり続けると考えられる。