この著作権侵害事件においては、別件最高裁判決による判例変更を理由として訴訟係属中に原告が訴えを取り下げたという事情が存在したが、第7巡回区控訴裁判所は、被告による訴訟に要した弁護士費用の弁済の求めは依然として認められる余地があると判断した。
著作権侵害事件における敗訴者による弁護士費用の弁済に関する事件
原告(Live Face on Web, LLC)はコンピュータ・コードの著作権者である。被告(Cremation Society of Illinois, Inc.)にコード使用のためのライセンスを与えていたが、後日、著作権侵害で被告を地裁に提訴した。訴訟開始後、何度も訴状が訂正され、5年が経過した。本事件は、Live Faceが起こした約200件の著作権訴訟のうちの1つにすぎない。本案判決が出ないうちに、原告は被告に対する訴えを取り下げる申立てを行った。取下げの理由は、「Google対Oracle事件」で最高裁がGoogleのフェアユース抗弁を認め、ファアユース判例が変更されたため、被告側のフェアユースの抗弁を覆せないためであった。裁判所は取下げを認め、被告の有利に裁判は終了した。
被告は地裁に弁護士費用の弁済を求める動議を申し立てたが、地裁は動議を認めなかった。その理由は、被告の勝訴は弁護に起因するものではなく、最高裁による判例変更という偶然の予期せぬ判例の変更によるものと認定した。実際、被告は、フェアユースの抗弁を含む抗弁のおかげで勝訴した。被告は第7控訴裁に控訴した。第7控訴裁は地裁判決を破棄し、事案を差戻した。その理由を控訴際は次のように述べた。
勝訴当事者に対する弁護士費用の弁済の認定は次の4つの要素を考慮して行う。①訴訟が軽薄なものであるか、②敗訴当事者の提訴の動機は何か、③敗訴当事者の訴えは客観的にみて不合理であるか、④費用弁済をすることにより、補償と抑止が進むか。
①について、地裁は、Live Faceが2度の却下申し立てに耐えたと指摘したが、却下動議を否認することは、判決に至るまでの一般的なステップであり、勝訴当事者に訴訟費用の負担を強いる十分な理由にはならない。②について、地裁は、Live Faceはトロールではないと結論付けたが、200件の著作権訴訟を起こしていること、地裁が指摘した、Live Faceが裁判で勝訴し、Live Faceが著作権荒らしではないと結論付けた1件は、Live Faceが著作権荒らしであることを示唆している。③については、Live Faceは、Katie Frideresの唯一の関与が、従業員として、著作権侵害の疑いのあるコードをホストしているウェブサイトを登録することであったにもかかわらず、Katie Frideresを個人としての資格で訴えた。地裁ではこれらの主張については触れていないが、本訴訟において、Katie Frideresの存在は、不合理である。④地裁は、被告側の勝利の状況がこの要素の評価に重要であるという理解を拠り所とし、それらの状況は「費用と手数料の裁定に有利にはならない」と結論付けた。しかし、4番目の要素は、補償と抑止の両方に注目しており、地裁はどちらも適切に判断していない。また、4番目の要素は、手数料を授与することによる抑止効果だけでなく、手数料を授与しないことによる影響も考慮しなければならない。
地裁は、被告による著作権法に基づく弁護士費用の請求の棄却を取消し、再検討すべきである。