CAFC判決

CAFC判決

Liquid Dynamics Corp. 対 Vaughan Co., Inc.事件

Nos. 2005-1105, -1325, -1366, -1399,2006,10,1-Jun-06

本件においてCAFCは、陪審員は状況証拠に基づいて事実認定ができることを示し、また、その状況証拠の信憑性に関する再評価は行なわずに、それらの証拠から陪審員が合理的にその結論に至ることができたか否かに基づき判断しました。

状況証拠に基づく陪審判決の正当性

Liquid Dynamics Corp. 対 Vaughan Co., Inc. 事件においてCAFCは、特許侵害および特許が有効であることを認めた陪審判決を審理した。

Vaughan Company, Inc. (以下、Vaughan)に不利な陪審評決に続いて、地方裁判所は、不公正行為の主張に関するベンチトライアルを行なった。裁判所はLiquid Dynamics Corporation (以下、LD)に有利な判決を下し、Vaughanの訴訟当事者としての行為に基づき陪審員が裁定した賠償額の3倍の額と、LDの弁護士費用の支払いを命じた。

争点の特許は、LDの米国特許第5,458,414号(以下、414特許)で、100万ガロンのタンク内で固体と液体を攪拌させるシステムに関するものであった。そのタンクは攪拌機を槽内に沈めてあり、タンク内全体にらせん状の液体の流れを作り出すものであった。

裁判所は、「実質的にらせん状のフロー」という文言を、ほぼらせん状で、タンクのほとんどを満たすものと解釈した。Vaughanは、大きなタンク内で固体の物質を混ぜることに使用される「チョッパーポンプ」を製造していた。LDとVaughanは、ジョージア州アトランタ市のタンクの入札に参加した。その当時、LDはRichard Behnkeという、アトランタの入札に従事した人物を解雇した。VaughanはBehnkeを雇用し、BehnkeがLDから直接コピーした図面を受け取った。

この事件の審理において、地方裁判所はVaughanの業務記録を検討した。Vaughanは侵害を主張されると、414特許の鑑定のために特許弁護士を雇い、その特許のタンク内のフローパターンを分析するためのコンピュータによる流体力学解析(以下、CFD)を依頼した。

弁護士は、侵害なしの鑑定意見を述べた。しかしながら、CFDでは、タンクが実質的にらせん状の流れを作り出すことを示していた。LDはこれらの行為を故意侵害の証拠として依拠した。

LDは47の全てのタンクが侵害されたという明確な証拠は持っていなかった。代わりにLDは、Vaughanの技術マニュアルに含まれていた、その設置方法を示す図面がLD独自の記録から失われた部分のタンクであることを証拠として指摘した。

LDはさらに、47個のタンクのうち9個に対する専門家によるCFDの結果に依拠した。VaughanはLD側の調査はポンブが稼動してからわずか数分間のフローを分析したにすぎないと反論した。しかし、裁判所は、それは、タンクが実質的にらせん状のフローパターンを作り出すことを陪審員が認定する上で、十分な証拠であると判示した。

控訴審においてCAFCは、陪審評決が実質的証拠によって裏付けられていたかどうかについて審理し、証拠の信憑性については再評価しなかった。Vaughanは、提示された証拠は47個のタンク全てが侵害されたことを示してはいないと主張した。

CAFCはその主張を却下し、陪審員は侵害の認定に十分な証拠を持っていたと判示した。Molecuon Research Corp. 対 CBS, Inc.事件, F.2d 1261 (Fed.Cir. 1986)を引用し、CAFCは、特許権者は直接的もしくは間接的な証拠のいずれかによって侵害を立証することができる、と判示した。

LDのCFDの調査およびいくつかの代表的なタンクの技術マニュアルの分析は、陪審員が全ての同様なタンクが侵害されたと結論付けるに十分であったLDの調査は同種のモデルに基づいており、同じモデルのタンクには基づいておらず、40-50回の反復を考慮しただけであったが、CAFCは、実質的ならせん状のフローの証拠提示は、陪審員が侵害を推論するに十分であったと判決した。

Vaughanのタンクの6個が米国外に設置されていたことを挙げて、Vaughanは、米国特許法第271条(f)に基づき、外国のクライアントに414特許を侵害させる意図がVaughanにあったという証拠は不十分である、と主張した。ここでまた、CAFCは、状況証拠は意図を示すことに使用されうる、と述べた。

Vaughanの414特許に関する知識、Behnkeの雇用、Vaughanの技術マニュアル、および専門家証言の全てが、Vaughanに侵害の意思があったことを十分に結論付けるものであると判決した。

Vaughanはさらに、414特許が米国特許法第112条の要件とする発明の実施形態のベストモードを開示していないことを理由として、特許は無効であると主張した。

CAFCは、LDがベストモードを開示していないという明瞭かつ説得力のある証拠をVaughanは提示していない、と陪審員は適切に認定したと述べて、Vaughanに不利な判決を下した。

Vaughanはさらに、クレームしたらせん状のフローを実施不可能であることを理由に特許は無効であると主張した。

Vaughanの主張は、発明者の一人が、特許出願提出後もらせん状のフローを発見していなかったと証言したことに基づいていた。

CAFCは、らせん状のフローは当業者であれば特許に開示された内容に従って実現することは可能であったとし、この主張も認めなかった。

次にCAFCは、陪審員の故意侵害の認定を裏付ける明確かつ説得力のある証拠はないというVaughanの主張を審理した。Vaughanは、陪審員が侵害に関する特許弁護士の鑑定に依拠することを無視できなかったこと、および、VaughanがLDのAugustaシステムをコピーしたことを立証する証拠は不十分であったことを主張した。

裁判所は、Read Corp. 対 Portec, Inc.事件, 970 F.2d 816 (Fed. Cir. 1992)における9つの故意侵害の要素について検討した。その9つの要素とは、(1)意図的なコピー、(2)特許の知識、(3)訴訟中の侵害者の態度、(4)被告の規模および財政状況、(5)事件の類似性、(6)被告の(侵害)行為の期間、(7)被告による是正措置、(8)被告の動機、がそれぞれあったかどうか、および、(9)被告が侵害行為を隠蔽しようとしたか、である。

CAFCは、弁護士の非侵害の鑑定は誠実さを推定するために用いられうるけれども、その鑑定が不適格、もしくは不正確な情報に基づいていると認定されるならば、その鑑定には効力がないと述べた。

本件において、陪審員は、コピーの認定にあたり、AugustaでのVaughanの入札、Vaughanの技術マニュアル、Behnkeの役割について基づき判断することができる。

最後に、Vaughanは、発明者が関与した2つの過去のタンクは、特許審査官に開示すべき先行技術ではなかったと地方裁判所が判決したのは、明らかな誤りであると主張した。しかしながら、地方裁判所は、設備は「非常に難しい構成」であり、LDはその開示において不公正行為をしていない、と判示した。

発明の工程に関する発明者の一人による証言に基づき、CAFCは、明らかな誤りはないと認定し、地方裁判所の判決を支持した。

この事件は、特定のデータがない場合、陪審員は侵害認定において状況証拠に依拠することを示した。控訴審において、CAFCは証拠の再評価はせず、単純に、入手可能な情報に基づいて、陪審員が合理的にその結論に至ることができたかどうかを審理することを明らかにしている。