CAFC判決

CAFC判決

Laserfacturing, Inc. 対 Old Carco Liquidation Trust 事件

No. 2009-1013,2012,12,17-Sep-12

この事件は、方法クレームのドラフトの際に、特に方法の工程に関与する対象を記載するために用いられる文言に関して細心の注意を払うことを実務家に注意喚起しています。別段の定義がなければ、裁判所は方法に関与する対象を記載するために用いられた固有の文言に重きを置き、用いられた文言の通常の意味に従って特許方法の範囲を解釈すると思われます。

この事件で、CAFCは地方裁判所よる「シート」というクレーム文言の解釈及びそれに続く非侵害の略式判決を支持した。

レーザ・ファクチャリング(Laserfacturing, Inc.及び The Twentyfirst Century Corporation)は、レーザまたは電子ビームを用いて溶接することによる迅速かつ精密な溶接方法についての自身の特許権を侵害するとして、ダイムラー・クライスラー(DaimlerChrysler Corporation)を訴えた。

特許方法は「一対のシート」を合わせて溶接するために縦長のビーム・スポットに焦点が合った高エネルギー密度放射線ビームを用いることを実質的に開示する。

レーザ・ファクチャリングは、ダイムラー・クライスラーのトランスミッション製造施設にあるレーザ溶接ステーションのうちの3機がレーザ・ファクチャリングの特許権を侵害すると主張した。

クレーム解釈の審理において、地方裁判所は争点となっている複数のクレーム文言を扱い、これらの文言には「シート」という文言が含まれていた。

ダイムラー・クライスラーは、「シート」という文言が「一様な厚さを有する幅広な薄い物質」を指すと主張し、自身のレーザ溶接ステーションはトランスミッションを溶接するのであり、ほぼ一様な厚さを有する幅広な薄い物質を溶接するのではないので、レーザ・ファクチャリングの特許権を侵害しないと主張した。

一方、レーザ・ファクチャリングは、「シート」という文言は「溶接されるべき要素」を意味し、それ故ダイムラー・クライスラーによるトランスミッションの溶接は特許方法の範囲に属すると主張した。

地方裁判所はダイムラー・クライスラーが主張した解釈を採用した。ダイムラー・クライスラーは、自身の主張した「シート」の解釈に基づいて、非侵害の略式判決も要求していた。このクレーム解釈に基づいて、地方裁判所はダイムラー・クライスラーを支持して非侵害の略式判決を付与した。

CAFCは「シート」という文言の解釈を新たに扱うことから着手した。レーザ・ファクチャリングは、「シート」という文言の広い解釈を主張する際に、レーザ溶接され得るものの単なる例として金属シートを説明することを示す、本特許に記載された先行技術文献にサポートを求めた。

従って、レーザ・ファクチャリングは、特許権に係る溶接方法は溶接される領域にだけ関係し、溶接される対象には関係しないと主張した。さらに、レーザ・ファクチャリングによれば、本特許は明細書において「ワークピース」という文言を用いているので、「シート」という文言の広い解釈、すなわち狭くない解釈がサポートされるとした。

CAFCはレーザ・ファクチャリングの主張を却下し、地方裁判所の解釈を支持し、レーザ・ファクチャリングの「ワークピース」の反論に応答して、すべての「シート」は「ワークピース」であるが、すべての「ワークピース」が「シート」ではないと述べた。

よって、「シート」という文言に広い意味を与えることは、クレームにおいて「ワークピース」ではなく「シート」という固有の文言を選択したことを無視することになる。

さらに、CAFCは、地方裁判所の解釈は「シート」という文言の平易で通常の意味と、関連技術分野におけるこの文言の慣用的な理解との両方に整合すると判断した。

この事件は、方法クレームのドラフトの際に、特に方法の工程に関与する対象を記載するために用いられる文言に関して細心の注意を払うことを実務家に注意喚起している。

別段の定義がなければ、裁判所は方法に関与する対象を記載するために用いられた固有の文言に重きを置き、用いられた文言の通常の意味に従って特許方法の範囲を解釈することになろう。

Key Point?この事件は、方法クレームのドラフトの際に、特に方法の工程に関与する対象を記載するために用いられる文言に関して細心の注意を払うことを実務家に注意喚起した。別段の定義がなければ、裁判所は方法に関与する対象を記載するために用いられた固有の文言に重きを置き、用いられた文言の通常の意味に従って特許方法の範囲を解釈するだろう。