CAFC判決

CAFC判決

LaserDynamics, Inc. 対 Quanta Computer, Inc. 事件

Nos. 2011-1440, -1470,2012,11,30-Aug-12

この事件において、CAFCは損害賠償に関する特定の種類の証拠を排除し、事件を地方裁判所に差し戻す一方で、損害賠償に関する新たな審理を命じる判決を下した地方裁判所を支持しました。この事件から、全体市場価値ルールの適用のためには、特許権者は特許された特徴が製品への需要をかきたてることを証明すること、及びそれらが証拠によって十分に裏付けられていることが理解できます。

CAFCは、レーザーダイナミクス(LaserDynamics)事件において、損害賠償額の算定及び方法論の誤りは、裁判所が賠償責任を認めている場合であっても、その賠償額の減額を求めて新たな審理を請求する必要があることを再確認させた。

レーザーダイナミクスは特許を実施することなく、そのビジネスモデルはライセンス活動に集中している。訴訟において、原告は争点となっている特許権についての29のライセンスを提出し、その特許権はどの種類のメディア(例えばCDまたはDVD)が光ディスクドライブに挿入されたかを自動で判断する方法に関する。

被告であるクアンタ・コンピュータ(Quanta Computer)はその顧客のためにコンピュータを製造している。クアンタは、特定の顧客と光ディスクドライブに関する売買契約を結んでおり、顧客から直接に光ディスクドライブを購入し、その光ディスクドライブと他のパーツをコンピュータに取り付け、その顧客に再販売する。これらの「売買」顧客のなかには、原告からライセンスを受けている企業もあった。

最初の審理において、陪審員は原告に有利な判決を下し、5200万ドルもの額の賠償金を与えたが、裁判官は過大な損害賠償の裁定額に基づくクアンタの新たな訴訟の要求を認めた。二番目の審理の後、陪審員は再び原告に有利な判断を下し、850万ドルの損害賠償を認めた。双方の当事者は評決を控訴した。

過大な損害賠償の裁定額を考慮して二番目の審理を命じた地方裁判所の判断を支持するなかで、CAFCは「全体市場価値」ルールの適用を再度限定した。

一般に、特許権者は販売された侵害品それぞれに対して合理的なロイヤリティを回収することが認められている。しかし、そのような算定は「販売可能な最小単位」に基づかなければならず、この場合では、光ドライブそのものであり、光ドライブが取り付けられたコンピュータ全体とはならない。

「全体市場価値」ルールはこの一般的な規則の例外であり、特許権者が特許された特徴が製品全体に対する需要をかき立てることを証明できた場合に適用される。「全体市場価値ルール」の適用の下、特許権者は製品全体に起因する一定の割合の収入を回収することができるのである。

製品全体の収入を発表することは必要以上に陪審員に影響を与え、不当に高額な損害賠償金を与えることを陪審員に納得させる可能性があるため、裁判所は特許された特徴が実際に製品への需要をかき立てることを証明する証拠を要件としている。

レーザーダイナミクス事件において、CAFCは、原告が特許された特徴が顧客の需要の基礎となることを裏付ける証拠を提供しなかったと述べた。むしろ、CAFCは特許された特徴が製品にとって「価値がある、重要である、または必要不可欠である」ことの証明でさえ、必要な需要の証明という高い基準を満たさないことを明らかにした。

それは、多くの特徴が顧客の需要の基礎とならなくてもこの基準を満たし得るからである。例えば、消費者がノートパソコンを購入した場合、高速プロセッサ、Wi-Fi機能、光ドライブ、長寿命のバッテリーは重要な特徴であるが、そのうちどのひとつの特徴も消費者にノートパソコンを購入させる単独の原動力を構成しない。

CAFCは損害賠償に関して新たな審理を認めたが、それは侵害に関してではなく、陪審員に提示された証拠を検討し、陪審員の評決を裏付ける十分な証拠を認定したのである。

しかし、CAFCは、レーザーダイナミクスの損害賠償の専門家は、ロイヤリティのレートに関する証言から排除されるべきであったと主張したクアンタに同意して、地方裁判所の判決を破棄した。

当事者は、専門家証言が証拠によって裏付けられていない場合には、その専門家証言に異議を唱えることができる。そして、CAFCは原告の専門家はロイヤリティのレートに関する彼の主張を少ないライセンスに基づき適切に裏付けなかったと判断した。

事件を地方裁判所に差し戻すにあたり、CAFCは専門家に合理的なロイヤリティの算定にあって、先ず、その基礎であるジョージアパシフィック要因を「十分に」検討するよう求めた。

レーザーダイナミクス事件は、裁判所は適切な方法論に基づかない結果を妨げる、または排除することができるので、利害関係者に対し彼らの損害賠償額の算定に十分な注意を払うよう注意を喚起している。

特許訴訟で訴えられた侵害者にとって、レーザーダイナミクス事件は、特許権者の損害賠償に関する専門家の意見がもっともらしいと思われるためには、事実上記録によって裏付けられていなければならないことを再確認させるものである。

Key Point?この事件において、CAFCは損害賠償に関する特定の種類の証拠を排除し、事件を地方裁判所に差し戻す一方で、損害賠償に関する新たな審理を命じる判決を下した地方裁判所を支持した。この事件から、全体市場価値ルールの適用のためには、特許権者は特許された特徴が製品への需要をかきたてることを証明すること、及びそれらが証拠によって十分に裏付けられていることが理解できる。