CAFC判決

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Kars 4 Kids Inc. 対 America Can! 事件

3th Circuit Nos. 20-2813, 20-2900,2021,8,10-Aug-21

この事件は、ランハム法35条の利益の吐き出し(日本の不当利得とは異なることに注意)を求めた事件である。厳しい激しい救済要件を求める衡平法上の要件の判断がなかったことをエラーとして取り上げた。

商標権侵害による利益の吐き出しを求める裁判で衡平法上の要件が判断されていないことを理由に、地裁判決を破棄・差戻した事件

America Can!は、NPO団体として1980年代後半から恵まれない児童への支援事業を開始した。テキサス州を中心に、事業内容をラジオ番組などで‘Cars for Kids’マークと共にその事業内を広告し、一般からの寄付を募った。1995年から2001年まで、ダラス市の地方紙に‘Cars for Kids’の事業内容を紹介する記事が掲載された。Kars 4 Kidsは、1995年に設立された法人で、‘flyers and bumper stickers’マークを使って慈善事業を開始した。1999年にラジオやテレビでその事業内容を宣伝し、2000年代初頭には、全国規模の広告キャンペーンを展開した。2003年にYahooやGoogleに宣伝を掲載した。

America Can!は2003年、Kars 4 Kidsに対し、テキサス州での‘Cars for Kids’商標の存在を通知し、‘Kars 4 Kids’の使用停止を求めた。America Cans!は、その後、テキサス州で‘Kars 4 Kids’の使用が停止されたと考え、それ以上のアクションはとらなかった。しかし、実際には、テキサス州を含めた米国全土で寄付を募るキャンペーンが展開され、Googleには広告を掲載していた。そのことを知ったAmerica Can!は2013年、2回目の侵害警告状をKars 4 Kidsに送り、同社のマークの使用はテキサス州で違法であるとしてその使用停止を改めて求めた。

両当事者はそれぞれ(Kars 4 Kidsは2013年、America Can!は2014年)、商標権侵害、不正競争法違反などを主張して地裁に訴訟を提起した。地裁はAmerica Can!の主張を認め、Kars 4 Kidsによるテキサス州での故意侵害を認定した。しかし、商標取消しまでは認めなかった。損害賠償について、Kars 4 Kidsが消滅時効(ラッチェス)を主張したが、地裁はそれを認めず、テキサス州での事業で得た収益金を不当な利得とみなし、その利益の吐き出しを命じる判決を下した。判決額には加重賠償が含まれていなかった。当事者は第3巡回区控訴裁に上訴した。

第3控訴裁は、Kars 4 Kidsの「消滅時効の抗弁」の争点に関し、Kars 4 Kidsが全国展開をしていたので提訴をもっと早く行うべきであったどうか、地裁に再度審理を求め、差戻した。「利益の吐き出し」に関し、第3控訴裁は、利益の吐き出しを扱った先例のBanjo Buddiesの要素(①侵害者に詐欺の意図があったか、②販売が迂回されたか、③他の救済が適切であったか、④原告の請求が不当に遅れたれたか、⑤公益への影響、⑥偽物をつかませているか)を判断する必要があった。しかし、②の検討だけであったので、地裁の判断には特別な救済に適用される衡平法が求める上記の要件を判断していなかったというエラーがあると第3巡回区控訴裁判所は認定した。そして、地裁に再審理するよう差戻した。