CAFC判決

CAFC判決

John Bean Tech. 対 Morris & Associates 事件

CAFC No. 2020-1090,2021,2,19-Feb-21

この事件では、特許の再審査で大幅にクレームが修正された特許に対して中用権が認められた、また、クレームの変更が大幅であったことから、衡平法上のエストッペルの抗弁が否定されたことが注目に値する。

再審査によりクレームが修正された特許に中用権を認め、長引いた事件のため、ラッチェスや衡平法上のエストッペルが争われた事件

John Beanは、冷却装置に関する特許(6,397,622)の特許権者である。2002年6月、競合するMorrisの顧客に622特許を侵害する旨の警告を行った。Morrisはそれに対し先行技術を引用し、本件特許は無効であると回答した。それに対して特許権者は、その後は何のアクションもとらなかった。

10年以上経過した2013年12月、特許権者は本件特許の再審査を要求し、Morrisから通知された先行技術をIDSとして提出した。再審査の結果、本件特許が新規性なしとされたため、特許権者はクレームを補正し、従属クレームの追加を行い、その結果、再発行特許が認められた。そこで特許権者は、Morris(被告)をアーカンソー州東部地区連邦地裁に提訴した。被告は、懈怠(Laches)及び衡平法上のエストッペル(equitable estoppel)などの抗弁を主張して対抗した。地裁はこれらの抗弁を認めたが、CAFCは地裁判決を破棄し、事件を差戻した。差戻審でMorrisは、衡平法上の中用権及び審査懈怠(prosecution laches)に基づくサマリージャッジメントを求めたところ、地裁は衡平法上の中用権を認める略式判決を下した。事件は改めてCAFCに控訴された。

最初の控訴に対し、CAFCは以下のように述べて、地裁判決を破棄した。先ず、懈怠について、地裁は、特許権者が10年以上も特許侵害訴訟を提起しなかったことを理由に消滅時効を認めたが、SCA Hygiene Products AB v. First Quality Baby Products事件最高裁判決(2017)により、米国特許法286条が定める時効期間である6年間の侵害行為に対して懈怠は主張できない。次に、衡平法上のエストッペルについて、特許クレームが再審査によって実質的に変化しており、そのように変化した後のクレームに関しては、特許権者の行動はミスリード(エストッペルの対象)にはならない。

今回の控訴に対し、CAFCは控訴を棄却した。地裁は、中用権に関する6つの要素を比較衡量することにより中用権を認めたが、John Beanは、そのうちの「侵害者が投資を回収するのに十分な利益を上げたか」という要件を地裁が十分に重視しなかったことにより裁量権を逸脱したと主張した。しかしながらCAFCは、投資の回収は中用権の唯一の目的ではなく、この要件のみによって中用権を否定する理由はないとして、地裁が中用権を認めたことに裁量権の逸脱はなかったと判断した。