ビジネス方法の付与後レビューがPTOに係属している間は、係争中の地裁事件の停止決定に対する控訴はCAFCの裁判権の管轄外とした判決,CAFCは、CBM(Covered Business Method:特定ビジネス方法)の付与後レビューの申請に基づく停止申立の決定に対する中間控訴であって、PTOがCBMレビューの申請を許可する前の中間控訴は、CAFCの裁判権の管轄外であると判断した。停止の許可まで平行して進む地裁訴訟のコストを最小限にするために、係争の早い時点でCBMレビューを申請するのが望ましい。
ビジネス方法の付与後レビューがPTOに係属している間は、係争中の地裁事件の停止決定に対する控訴はCAFCの裁判権の管轄外とした判決
CAFCは、先例のない事件において、AIA(America Invents Act)の§18(b)(1)によるCBM(Covered Business Method:特定ビジネス方法)の付与後レビューの申請に基づき、地方裁判所における裁判の停止申立の決定に対する中間控訴であって、PTO(米国特許商標庁)がCBMレビューの申請を認定する前の中間控訴は、CAFCの裁判管轄権の範囲外であると判断した。
CBMレビューは、申請人がCBM特許の有効性をPTOで争えるようにする手続であり、AIAにより新たに設立された暫定的な手続である。この制度は、CBMレビュー手続の対象となっている特許に関連した地裁での侵害訴訟を停止する決定に対する中間控訴を当事者に許容している。
Intellectual Ventures II LLC(以下、IV)は、5つの特許に関して、JP Morgan Chase & Co., JP Morgan Chase Bank, National Association, Chase Bank USA, National Association, Chase Paymentech Solutions, LLC及びPaymentech LLC(以下、JPMC)を提訴した。訴訟開始から1年後、JPMCは、4つのCBMレビューを申請する計画を地裁に伝え、それらの結果が出るまで事件を停止するよう申立てた。その申立に続き、JPMCは4つあるCBMのうち2つについてレビューを申請したが、残りについては申請しなかった。地裁は、PTOがCBMレビュー手続を許可するか否かについて判断する前に、JPMCの停止申立を却下した。
JPMCの停止申立を却下する際に、地裁はAIAの§18(b)(1)に示されている4つの要件のテストを適用した。(1)停止により問題は単純化し、事件が効率化されるか、(2)ディスカバリーが完了しており、裁判の期日が決まっているか、(3)停止は被申立人を不当に害するか、又は申立人に戦術的優位を与えるか、及び(4)停止により当事者及び裁判所に対する訴訟負担が削減されるかを検討した。具体的に、地裁は、PTOが5つの特許のうち2つのみに対してCBMレビュー手続を開始するか否かを判断するまで訴訟の全体を停止することは妥当ではないと述べた。また、地裁は、CBMレビューよりも早く訴訟が解決されると判断し、迅速に裁判を受けるIVの権利は、裁判所の負担を削減するものではないと判断した。
JPMCは即時控訴し、AIAの§18に基づくCBMレビュー手続に関する停止申立の却下に対する中間控訴は、CAFCの裁判権の管轄内であると主張した。
通常、CAFCは地裁の「終局判決」のみを見直す権限を有する。よって、停止申立に関する決定は、一般に終局判決ルールの下で即時控訴可能となるものではない。最高裁判所の判例に沿い、CAFCは、AIAにより許可される停止決定の即時控訴の認定は狭く解釈されるべきだと述べた。
控訴において、問題は、§18(b)(2)におけるCBMレビュー手続きの正確な解釈は、PTOが手を付けていない、保留中のCBMレビューの申請を含むか否かであると、CAFCは述べた。
CAFCはAIAの条文を解析し、法令は、当事者によるレビューの申請とPTOによるそのような手続の許可を区別していると判断した。CAFCは、「手続」と「申請」を一貫して区別するAIAの条文を見出し、この結論を裏付けた。また、CAFCは、AIAの立法経緯は、CAFCの判断を支持していることを見出した。
CAFCは、提出された法律に基づかない主張はどれも、AIAの原文の解釈から離れているために十分な根拠を示すものではないと判断した。
ヒューズ判事はこの意見に反対し、合議体の大多数の原文の解釈は過度に狭く、AIAの目的とCBMレビューの具体的な目的に反すると意見し、議会は、特許の質を上げ、かつ不要な訴訟コストを抑えるために、より効率良く、かつ、一貫性のある特許システムを成立させるためにAIAを設立したと考えているとした。
同判事は、CBMレビュー制度は、ビジネス方法特許を検討する際に、コストがより低く、かつ、より早い行政上の代替手段を提供するために設立されたものであり、地裁における訴訟の追加ではなく、その代わりになるように設計されたものであると述べた。
彼のAIAの立法経緯の解析により、ヒューズ判事は§18(b)(1)における停止規定を、CBMレビューの停止及び停止決定の再検討を、CBMレビュー手続のどの時点においても可能にするよう、広く解釈した。
合議体の大多数は、争う側が正しければ、CBMレビューの申請書の主張に拘わらず、被疑侵害者は早急に地裁へ事件の停止を働きかけられると説明した。
この判決は、並行するCBMレビュー手続に照らした、地裁による停止決定の再検討に対するCAFCのアプローチを明確にしている。実際問題として、この判決は、CBM特許に関する特許権の被疑侵害者は、並行するCBM特許の付与後レビューの提出から、PTOがそのCBMレビューを許可するまでの期間中に、地裁で戦い続ける必要が高いと示している。
よって、CBM特許について侵害の主張を受ける訴訟当事者は、停止が許可される可能性を高め、停止の許可までの並行地裁訴訟のコストを最小限にするために、係争中になるべく早い時点にCBMレビューを申請するとよいだろう。
Key Point?CAFCは、CBM(Covered Business Method:特定ビジネス方法)の付与後レビューの申請に基づく停止申立の決定に対する中間控訴であって、PTOがCBMレビューの申請を許可する前の中間控訴は、CAFCの裁判権の管轄外であると判断した。停止の許可まで平行して進む地裁訴訟のコストを最小限にするために、係争の早い時点でCBMレビューを申請するのが望ましい。