CAFC判決

CAFC判決

Independent Ink, Inc. 対 Illinois Tool Works, Inc. & Trident, Inc.事件

2005,7,2005年1月25日 CAFC判決

Independent Ink, Inc.は抱き合わせ製品(tying product)に対する市場支配力を証明できなかったことを認定した、地方裁判所の判決を一部破棄、一部維持した。,この事件は、特許製品の抱き合わせに基づく独占禁止行為に関する訴訟での、特許による市場支配力の立証・反証に関するものであり、独占禁止行為に関する訴訟での特許抱き合わせ議論に関する判例法を再度確認し、市場支配力を反証する基準を示した点で注目に値する。

特許製品抱合わせに基づく独占禁止行為訴訟における特許による市場支配力の推定及びその反証について

2005年1月25日、CAFCは、Independent Ink, Inc.(以下、”Independent Ink”)は抱き合わせ製品(tying product)に対する市場支配力を証明できなかったとする地方裁判所の判決を一部破棄、一部維持した。

Illinois Tool Works, Inc.(以下、”ITW”)の子会社である、Trident, Inc.(以下、”Trident”)はインクジェット装置及び供給システムに関する特許を有しており、また、特許のプリントヘッド用のインクの製造も行っていた。

Tridentは、自社の特許製品の使用許諾をプリンター製造業者に与えるライセンス契約において、特許されていない自社のインクを併せて購入することを条件としていた。

競合インク製造業者であるIndependent Inkは、Tridentがシャーマン法第1、及び2条に違反し、違法な抱き合わせ販売及び独占行為を行ったとして訴えた。

シャーマン法第1条は、商業を抑制する契約、同盟及び結託が法律に違反する行為である旨を規定し、第2条では具体的に独占行為を禁止している。抱き合わせ販売とは、ある商品の販売を、他の商品の購入を条件にして行なうことである。

地方裁判所は、独占行為に関するIndependent Inkの両方の主張について、Tridentの略式判決申し立てを認めた。地方裁判所は、Independent Inkが、独占禁止法に違反するような抱合わせをおこなうための市場支配力の存在を肯定的に証明することができなかったことを判示するに当たり、Jefferson Parish Hospital District No. 2 対 Hyde事件判決466 U.S. 2, 16(1984)における同意意見及び反対意見に大きく依拠した。

予備的事項として、CAFCは連邦巡回区裁判所または第9巡回区裁判所法がシャーマン法における特許抱き合わせの適法性を取り扱えるのかどうかを検討した。連邦巡回区裁判所の先例を考慮して、CAFCは、特許抱き合わせによる独占禁止法の問題は連邦巡回裁判所法によって取り扱われるが、関連する市場の決定などの独占禁止法の他の要素については、地方巡回裁判所法が適用されると結論づけた。

本件の主題に戻りCAFCは、Independent Inkの主張するシャーマン法第1条違反について判示した。CAFCはまず、特許抱き合わせが違法と推定されるかどうか、また原告が、特許が抱き合わせ製品に対し関連市場における市場支配力を与えることを肯定的に証明しなければならないかどうかの検討から、事件の分析を開始した。

最高裁判所の判例のうち、抱き合わせ販売契約に関する特許事件及び非特許事件を検討した結果、CAFCは抱き合せ商品が特許されているか、あるいは、著作権を有する場合には、市場支配力が推定されるであろうと認定した。

CAFCは、最高裁判所の判例は学会からは鋭い批判を受けていること及び他の控訴裁判所の見解でも好意的ではないとするTridentの主張に注目したが、その主張を受け入れず、Tridentの主張を退け、最高裁判所がそれらの判例を明らかに覆すまで先例に従うと述べた。

次にCAFCは、市場支配力の推定範囲について特許の観点から検討した。Jefferson Paris事件判決及び他の裁判所における判決を受けてCAFCは、特許は「(特許製品に関し全国的な市場における)支配力を推定させるものである」が、被告人は「市場支配力の推定、及び、特許抱き合わせにより生ずる違法性」について反証することが可能であったと判示した。

地方裁判所と意見を異にして、CAFCは抱き合わせ製品の代替物が入手可能であったとするTridentの証拠は十分でないとした。代わりにCAFCは、推定は、専門家証言、もしくは有効競争範囲といった他の信用に足る経済的証拠、あるいは市場支配力の欠如を示す他の証拠によってのみ反証可能であると認定した。

市場支配力の推定を反証するのに十分な証拠はなかったため、CAFCはIndependent Inkによるシャーマン法第1条違反に関する略式判決を覆し、Tridentにこの推定を反証可能な証拠を提示する機会を与えるため、本件を差し戻した。

Independent Inkのシャーマン法第2条違反の主張に関しては、CAFCは、原告は(1)被告が関連市場を独占しようとする明確な意図をもっていたこと、また(2)それが「成功するであろう危険な可能性」があることを証明しなくてはならないと述べた(Spectrum Sports Inc. 対 McQuillan事件判決, 506 U.S. 447, 455(1993))。

CAFCは、本件における独占行為は、Tridentの特許に係る抱き合わせ製品よりもむしろ、それと抱き合わされた製品(tied product)に関連していることに注目した。

ここで、抱き合わせ製品に対する市場支配力が抱き合わされる製品に十分な市場支配力を与え、独占支配要求を確立するとの推定は、判例法では働かないことを認定し、CAFCは、Independent Inkはシャーマン法第2条違反の主張をサポートするための経済的証拠を提示できなかったため、これに関してはTridentに略式判決を認めるとした地方裁判所の判決を維持した。

本件は、CAFCが拡大はしなかったものの、独占禁止行為に関する訴訟での特許抱き合わせ議論に関する判例法を再度確認し、市場支配力を反証する基準を示した点で注目に値する。