CAFC判決

CAFC判決

Incept LLC 対 Palette Life Sciences, Inc. 事件

CAFC, No. 21-2063 (August 16, 2023)

CAFCはこの判決で、PTABが新規性判断においてクレーム発明を公知例と対比するにあたり、公知例には多くの選択肢が記載されていたのに一部だけを選択して組み合わせたことが誤りであるとの特許権者の主張に対し、公知例に開示の各組成物がクレーム発明と同様の特性を有していることは理解できるとして、特許権者の主張を認めなかった。

様々な選択肢が記載されている引用例に基づいて新規性欠如が認定された事件

Incept LLCは、前立腺がんの放射線治療方法に関する特許2件(8,257,723及び7,744,913)を保有する。723特許は913特許の継続出願に係る特許であり、両特許の明細書の記載は同一である。2件の特許は、患部と正常細胞との間にfiller(遮蔽物)を入れることで正常細胞への放射線の照射量を減らす技術に関する。

請求人(Palette Life Science)は両特許のIPRを申請した。請求人は、無効資料としてWallace特許を引用した。PTABは、Wallace特許には723特許のクレーム1の構成要素すべてが開示されているとして、新規性を有さないと判断した。特許権者はCAFCに控訴。

CAFCはPTABの決定を支持し、その理由を次のように述べた。特許権者は控訴審で、Wallaceはそれぞれ異なる特性を有する様々な組成物を開示しているにもかかわらず、PTABがWallace特許の互いに異なる教示をつなぎ合わせる「パッチワーク的手法」を用いて、Wallace特許がクレーム発明を開示していると判断したことは誤りであると主張した。しかしながら、Wallace特許は組成物の成分について様々な選択肢を示しており、各組成物が有する特性に程度の違いはあるものの、開示される組成物が有していると認められる特性は新規性を否定するために十分である。また、クレーム発明はある性質を有するfillerを入れることに関するところ、Wallace特許の組成物がクレームに含まれることが分かるように十分な詳細が示されており、クレーム発明と同じ性質を有していることは当業者が理解できるから、Wallace特許が複数の組成物を開示していることは新規性を認める理由にはならない。また、特許権者は、PTABの認定に反して、Wallace特許にはあらゆる組成物について患部と正常細胞の間に挿入するfillerとして使用できることは開示されていないと主張する。しかしながら、Wallace特許には組成物がspace-filling deviceとして使用できるとの記載があり、Wallace特許にはさらに、一般的な記載として、Wallace特許の組成物を様々な用途で用いることができること、概してspace-filling deviceとして使用可能なことが記載されているかから、PTABの認定は十分な証拠に裏付けられている。