CAFC判決

CAFC判決

In re Elster事件

CAFC No. 20-2205,2022,2,24-Feb-22

ランハム法2条(C)は、生存する個人名を無断で使用する商標の登録を禁じている。特許庁はその観点から出願を拒絶した。CAFCは、本件の商標を憲法にもとづく「言論の自由」の観点から眺め、特許庁の判断を否定した。

Elsterは2018年、国際分類25類(シャツ類)の商品を指定して、‘TRUMP TOO SMALL’の文字商標を出願した。Elsterは、出願商標が2016年の共和党大統領指名選挙でのTrump候補とMarco Rubio候補の間の論戦を想起させ、「どれほどTrump候補の政策がちっぽけなものである」かという政治的メッセージを発信するものであり、そのメッセージは憲法の「表現の自由」に裏付けられていると主張した。

商標審査官は、現存する個人の姓を同意なく使用した商標は登録できないという理由から、ランハム2条(C)を根拠に出願商標を拒絶した。憲法違反の主張については、商標登録の拒絶は制定法で付与された行政機関としての権限で行われており「言論の自由」に対する制約にはならないとして、Elsterの主張を退けた。Elsterは拒絶査定を不服として審判請求したが、審判部(TTAB)は審査官の拒絶査定を支持した。ElesterはTTABの決定を不服としてCAFCに控訴。

CAFCは、憲法の定める言論の自由に反するとしてTTABの審決を次の理由で破棄した。

連邦最高裁の判例(Matal v. Tam事件(2017)及びIancu v. Brunetti事件(2019))により、商標法の定める拒絶理由が憲法違反とされたが、これらの判例は本件で争われたランハム法2条(C)に関わるものではない。判例によれば、あるメッセージが印刷・販売されたことで「言論の自由」が希釈されることはない(Cohen v. California連邦最高裁事件 (1971))。また、T-シャツに印刷されたメッセージも、「言論の自由」で護られている(Ayres v. City of Chicago第7控訴裁事件(1997))。

商標も、言論の自由により護られており、公人に対する批判的メッセージも同様である。Elsterの商標出願を審判部が拒絶したことは、憲法で定める言論の自由に違反するため、審判部の拒絶査定を破棄する。ランハム法2条(C)の規定そのものの違憲問題は本件では提起されていないが、同条の規定が過度に広く適用される懸念がある。