CAFC判決

CAFC判決

Honeywell Int’l, Inc. 対 Universal Avionics Sys. Co.事件

Nos. 2005-1112, 2007 WL 1518852,2007,9,25-May-07

本件では不特許事由である公然使用が争点となりました。実験的な使用は、公然使用から除外されますが、これは事実に依存する度合いが高いと言えます。したがって、事実が適切であれば、特許出願日より1年を超える前に実験的な使用が行われたとしても、特許が無効又は拒絶されることはありません。

完成した発明の試験ではなく発明を完成させるための試験は実験的な使用に相当するため、公然使用とはいえない

ハネウエル(Honeywell)事件において、CAFCは、係争中の特許は公然使用または商業的販売により無効にはならないという地方裁判所の判決を維持した。主要な争点は、公然使用と商業的販売の対象から除外される実験的使用の適用をハネウエルが主張することができるかどうかというものであった。

2002年に、ハネウエルは、ユニバーサル・アンド・サンデル(Universal and Sandel Avionics, Inc.)に対し、「仮想先読みシステム」に係る同社の特許権を侵害していると主張して提訴した。

仮想先読みシステムは、航空機で使用され、パイロットに警告して、地面に向かって思いがけず飛行することを防止するように設計されたものである。

機内に搭載されるこのシステムの仮想的な側面はシステムの動作にあらわれる。即ち、このシステムは、航空機の位置を、物理的に検知した接近中の地形ではなく、地形図及び人工の障害物と比較する。

地方裁判所は、最終的に、被告の地形検知システムはハネウエルの特許権を侵害していないと認定したが、米国特許法第102条(b)に基づいて無効であるという被告の反訴を棄却した。

ここにおける、米国特許法第102条(b)は、特許可能な発明を「合衆国における特許出願日より1年を超える前に、本邦において公然に用いられまたは販売されて」いない発明に制限するものである。被告の反訴はCAFCの前の裁判における争点の一つだった。

早すぎる販売の事由を審理する際に、CAFCはPfaff 対 Wells Electronics., Inc.事件(525 U.S. 55 (1998))で説明された基準を適用した。この基準は「(1)発明は商業的販売または販売の申し出の目的に係るものであり、かつ、(2)発明は申し出または販売の時点で特許出願の準備ができている」というものである(Honeywell, 2007 WL 1518852, *11)。

第2の条件は、発明が実施化された場合、または、発明が「当業者がそれに基づいて過度の実証実験を行うことなく発明を実施可能な」書面による説明に記載された場合に満たされる。

ただし、「全ての限定に適合し、その意図された目的のために動作する実施形態を特許権者が有していた場合に、発明は実施化されたものとされる」(Honeywell, 2007 WL 1518852, *12(引用省略))。

基準日の前に、ハネウエルは、高級航空機用の新しいシステムを供給することについてGulfstream及びCanadairと交渉した。しかし、地方裁判所は、ハネウエルは試験プログラムを促進するために交渉しただけであると認定し、CAFCもこの認定を維持した。

それは、システムを供給する提案はプログラムの完了を成功させることを条件としていたからである。ハネウエルの試験は実際に成功したが、ハネウエルは「実験的使用を立証する」ために発明を変更する必要はなかったと、CAFCは認定したのである(Honeywell, 2007 WL 1518852, *11)。

実験は第2の条件についてもハネウエルを支持するものであった。ハネウエルのシステムは基準日前に適切に動作したが、このシステムの稼働は、発明を実施化するための「取り組み」の一部として理解するのが正しく、「現実」の実施化として理解すべきではないとCAFCは認定した。

これは、その試験の後もハネウエルには「依然として動作の成功を確かめるための作業があった」からである(Honeywell, 2007 WL 1518852, *12)。これは発明を実施化するための一連の取り組みであり、実際の実施化ではないとCAFCは認定した。さらに、地方裁判所が検討した文書は、当業者が発明を実施化するのに十分なものではなかった。

公然使用の事由は、「守秘義務の制限を課すことなく、かつ許可された実験を行うこともなく、完成された発明を公然と使用する」ことを必要とする(Allied Colloids Inc. 対 American Cyanamid Co., 64 F.3d 1570, 1574 (Fed. Cir. 1995), *13)。

CAFCは、この点についても実験的使用の認定を適用して地方裁判所の判決を維持した。実験は、意図された使用それ自体ではなく、意図された使用の試験を構成するという判決にも関わらず、CAFCは、実験の状態に基づいて発明は基準日前には完成していなかったとも言及した。

ハネウエル事件においても、CAFCは、実験的使用の例外は事実に依存する度合いが高いことを判示した。特許出願日より1年を超える前に実験的使用がなされても、事実状況が適切ならば、発明が特許されることが阻害されることはないだろう。