CAFC判決

CAFC判決

Glaxo Group Ltd. 対 Apotex, Inc.事件

2005,1,2004年7月27日 CAFC判決

この事件は、「ジェネリック薬品会社がFDAに対しANDAを提出することが故意の特許権侵害に当たるかどうか」に争点をあてています。

ジェネリック薬品会社がFDAに対しANDAを提出することが故意の特許権侵害に当たるかどうかに関する判決

2004年7月27日CAFCは、特許された抗生物質のジェネリック薬の簡略新薬申請(以下、”ANDA”)が提出された場合に、故意の侵害行為を判別するための基準に関する判決を下した。

Gajarsa判事の意見によれば、CAFCはYamanouchi Pharmaceutical Co. 対 Danbury Pharmacal, Inc. 事件231 F.3d 1339, 1346 (Fed. Cir 2000)の判例に基づき、企業がANDA申請を行うことだけでは、米国特許法271(e)(4)に基づき弁護士費用の賠償を目的として故意の侵害行為を認定するためのサポートは得られないと述べた。

この特許法の条項は、所定の医薬の申請に関連する限定された目的のためのみの「人為的」行為による侵害を許容している。

本件は、優れた生物学的利用率とセフロキシム・アキセチル(以下、”CA”)の結晶体の安定性をもたらす高純度の非晶質CAに関する米国特許第4,562,181号(以下、181特許)と高純度の非晶質のCAを生成する方法の米国特許第4,820,833号(以下、833特許)に関するものである。

181特許の非晶質CA合成物は、当業者の予想に反してより優れた医薬製剤を提供するものである。Glaxo Group Ltd. (以下”Glaxo”)は譲受人であり、Ceftin?の製品名で医薬品をマーケットで販売していた。また、Glaxoの売上は40億ドルを超えていた。

2000年4月5日、ApotexはFDA(食品医薬品局)に対し、Ceftin?のジェネリック薬の承認を求めてANDA申請を行った。

Apotexは、現在では廃止された条項(すなわち、合衆国法律集第21編、357条)により、自分達の抗生物質に関連する特許のリストをオレンジブックに掲載することを免除されていたので、合衆国法律集第21編355条(i)(2)(A)に基づく無効性又は非侵害に関する証明書を提出する必要はなかった。

GlaxoはApotexに対してイリノイ州北部地方裁判所に予期される侵害 (anticipatory infringement) 及び米国特許法271(e)(2)(A)に基づく「人為的侵害」を主張し確認判決の申立をした。

2002年6月10日、地方裁判所はApotexに対し予備的差止命令を発行し、非陪審審理後、判事はApotexが181特許及び833特許の侵害を認定した。地方裁判所は新規性及び自明性に基づくApotex側からの特許無効の主張を却下した。

地方裁判所は更に、ApotexはGlaxoの特許を故意に侵害し、ANDA申請に際し、法律顧問から助言を受けることを怠り、かつ、相当な注意を払わなかったことを理由に米国特許法285に基づく弁護士費用の賠償を裁定した。これに対してApotexは控訴した。

侵害の争点に関して、Apotexは、地方裁判所が181特許のクレーム1の『少なくとも95パーセントの純度を持つ』という文言を、5パーセント以上の他の原料と合わせて生成することをカバーすると誤って解釈したと主張した。

Apotexは製剤に関して、90パーセントしか非晶質CAを含んでおらず、181特許を侵害するものではないと主張した。

CAFCはこの主張を却下し、Apotexの解釈はその技術分野における通常の意味及び181特許の明細書の記載に反するものであり、そのような解釈は、好適実施例を排除するものであると認定した。更に、CAFCはApotexの833特許に対する非侵害の同様の主張も同じ理由で退けた。

無効の問題に関してApotexは、地方裁判所の『純度』(purity) と『純粋』(pure) の解釈は、米国特許法112条に基づき特許を無効とするものであると反論した。

CAFCはApotexの主張を却下し、181特許はCAを5パーセント以上の他の原料と合わせて生成する技術を公にしたと判示した。Apotexは更に、181特許の親出願によれば、その技術分野の当業者が97パーセント以上の純CAを非晶質の形態で生成することは可能であるとし、米国特許法102(b)条に基づく新規性若しくは自明性に違反すると主張した。

これに対し、CAFCは、Apotexの専門家さえも、非晶質CAがCAの結晶体と比較してより優れた安定性及び生体吸収性の特性のコンビネーションを持つものあることを、親特許が教示もしくは示唆ことはないと認めたとして、この主張を却下した。

故意の侵害行為に関し、Apotexは以下の3つの主張をした。まず、ANDA申請を行っただけで、特許権の侵害行為は行ってはいない。また、Ⅳパラグラフの証明書を提出しなかったために、特許の無効もしくは非侵害を立証していない。更に、Apotexが相当な注意を払っていたという証拠を、地方裁判所は無視した。

CAFCは、ANDA申請により、米国特許法271(e)(2)に基づく『人為的侵害』が発生しており、法上定義された結果を生じさせていると認定した。

CAFCは、米国特許法271(e)(4)は、米国内における商業的活動が行われた場合、または、商品が輸入され場合に、金銭的損害の賠償を認めるものであると繰り返し述べた。また、例外的な場合のみ、米国特許法285に基づき、勝訴した当事者につき弁護士費用の賠償が認められる。

過去の判例では、弁護士費用の賠償のための例外的な場合として、不公正行為、違法行為による訴訟と故意の侵害行為が含まれると認定されていた。

CAFCは、本件を例外とする何らかの追加的事実がない限り、ApotexがANDA申請を行ったことだけでは、米国特許法第271条(e)(4)に基づき、弁護士費用の賠償を目的として故意の侵害行為を認定するためのサポートは得られないとし、第271条(e)(2)の規定に基づいて、特許権者は特許権の存続期間満了前におけるジェネリック薬の製造もしくは使用等の侵害に関する訴訟を提起することができるとした。

本件は、何らかの更なる不公正行為がジェネリック薬品会社にない限り、ジェネリック薬品会社がFDAに対しANDA申請を行うことだけでは、特許権者の特許権を故意に侵害するとは認定されないことを明示した点で重要である。