CAFC判決

CAFC判決

Gensetix, Inc. 対 The Board of Regents of University of Texas System 事件

CAFC No. 2019-1424,2020,7,24-Jul-20

大学法人が州法にもとづく「主権免除」の適用を受けることができるとした判決。CAFCは、最高裁判例の判例を引いて、憲法修正第11条は広い対象に適用できるとしてテキサス大学の主権免除を認めた。

大学法人が州法にもとづく「主権免除」の適用を受けることができるとした判決

テキサス大学(州立)は、患者の癌細胞を破壊する免疫システムの変更に関する2件の方法特許(8,728,806 & 9,333,248)の特許権者である。2件の特許の独占的ライセンシーである訴外Alex Mirrowは2014年、Gensetixに独占的ライセンスを許諾した。その後、テキサス大学はライセンス契約を改正して、Gensetixが侵害訴訟を起こす場合、Gensetixの費用負担でもって訴訟を行うこと、Gensetixが訴訟を起さないときにはテキサス大学が代わりに出訴できること、侵害訴訟に両当事者が協力すること、ライセンス契約によってテキサス大学の「主権免除」(sovereign immunity)の立場に変更がないこと―が確認された。

Gensetixは2017年、独占的ライセンシーとしてBaylor College of Medicineや関連企業を本件特許の侵害で訴えた。テキサス大学がこの訴訟に原告として参加することを拒否したため、Gensetixはテキサス大学を「非自発的原告」(involuntary plaintiff)として訴状に記載した。テキサス大学は、「主権免除」(=テキサス州法によって連邦裁判所での訴訟に当事者として参加することが強制されない主権者)を理由に忌避を申し立てた。地裁はその申立てを認め、特許権者不在の裁判は維持できないと理由で、本件を却下した。Gensetixは地裁の却下決定を不服としてCAFCに控訴した。Gensetixは、主権免除が適用されるのは個人が州を訴えた場合に適用される原則である、本件でテキサス大学に対して請求はなされていない、として主権免除を受ける資格がないと主張した。

CAFCは、最高裁判例の判例を引いて、憲法修正第11条は広い対象に適用できるとしてテキサス大学の主権免除を認めた。しかし、地裁が特許権者不在を理由に請求を棄却したことについて、最高裁や第5控訴裁の判例を引用し、誤った法解釈や証拠の評価に基づく認定をしたことが裁量の濫用にあたるとして、一部判決を破棄し、事件を地裁に差し戻した。