引例の数値範囲の下限が、クレームされた数値範囲の上限に接する場合、クレームは自明であり特許性を失うとした判決。CAFCは、特許発明とわずかにしか数値範囲が重なっていない場合でも、このような先行技術は特許発明の新規性を失わせることができると判示した。
引例の数値範囲の下限が、クレームされた数値範囲の上限に接する場合、クレームは自明であり特許性を失うとした判決
Genentechは、「抗体及び他のプロテインの不純物をアフィニティ・クロマトグラフにより10-18°Cで精製する方法」に関する特許(7,807,799)を保有する。この特許に対しHospiraがIPRを申請し、PTOは自明であるとして特許を無効と決定した。Genentechはその決定を不服としてCAFCに控訴。PTOは、IPRの合憲性を主張するために被控訴人として訴訟参加した。
無効理由となった先行例には「全ての工程が室温(18~25°C)で実行される」と記載されていた。CAFCは、特許発明とわずかにしか数値範囲が重なっていない場合でも、このような先行技術は特許発明の新規性を失わせることができると判示した。このような場合に特許性が認められるためには、特許発明に係る数値範囲が特許発明を動作させるために重要であることを示す必要があるが、特許権者Genentechはこれを立証できなかったので、IPRの決定を支持した。
なお、Genentechは、改正特許法(AIA)の成立前の特許にIPRを適用するのは憲法(第5修正)に違反するとも主張したが、その主張に対してCAFCは、先例(Celgene Corp. v. Peter, 931 F.3d 1342, (Fed. Cir. 2019))により、「改正法前の特許再審査と改正後のIPRでは審査手続きが異なるが、その相違は違憲問題にすべきほどの違いではない」としてGenentechの違憲主張を退けた。