後から起こされた訴訟をfirst-to-file rule(最初に提訴した者の裁判所を法廷地とする一般原則)で棄却した判決,この判決は、訴訟のfirst-to-file ruleの適用に関する好例を提供する。このルールの下では、特別な考慮事項が無い限り、非侵害、無効、または関連子会社の争点に関する確認判決を求めて侵害被疑者が別の裁判所で2番目の訴訟を起こすことはできないと思われる。
後から起こされた訴訟をfirst-to-file rule (最初に提訴した者の裁判所を法廷地とする一般原則)で棄却した判決
フューチャーウェイ(Futurewei Tech., Inc.)事件において、CAFCは、地方裁判所がfirst-to-file rule(最初に提訴した者の地元の裁判所を法廷地とする一般原則)に基づいて確認判決の申し立てを却下したことを支持した。
アクセス(Access Co., Ltd.)という会社が、争点の特許権者である。2009年、アクセスは、 APAC(Acacia Patent Acquis-ition LLC)との間で独占的ライセンス契約を締結した。APACは、アカシア・リサーチ(Acacia Research Corporation)の100%子会社である。
契約により、APACには、特許権のサブライセンスを行う独占的権利と、特許権を行使する独占的権利とが付与された。契約条項のうちセクション11.3は、第三受益者を生み出すことを広く否定している。セクション2.1は、APACがライセンスされた特許権をアクセスの製品に関連してアクセスの顧客やエンドユーザに対して行使することを禁じている。
それから程なくして、APACは、ライセンス契約に基づき、その特許権に関する自己の全権利を100%子会社であるスマートフォンテクノロジー(SmartPhone Technologies LLC)に譲渡した。
2012年、スマートフォンテクノロジーはファーウェイ(Huawei)に対して、本件特許権を侵害したと主張して訴訟を提起した。ファーウェイは、テキサス州東部地区の米国地方裁判所の管轄において携帯電話機及びタブレット端末を製造していた。その翌日、ファーウェイは、カリフォルニア州中部地区の米国地方裁判所に対して確認判決の申し立てを行った。
ファーウェイの訴状は、ファーウェイが長年にわたりアクセスの顧客であることを主張していた。請求の趣旨1から5は、本件特許権について非侵害であるとの確認判決を求めており、請求の趣旨6から10は、本件特許が無効であるとの確認判決を求めていた。
請求の趣旨11は、アクセスの顧客に対するセクション2.1の保護はファーウェイの利益にも及ぶことを意図しており、スマートフォンテクノロジーは譲受人としてこのセクションに拘束されると主張していた。
請求の趣旨16は、アカシア・リサーチ及びスマートフォンテクノロジーが企業の分身として活動しているとする確認判決を求めていた。
スマートフォンテクノロジー、アカシア・リサーチ、及びアクセスは、カリフォルニア州中部地区におけるファーウェイの訴えを却下するように求める申し立てを行った。
地方裁判所は、この申し立てを認めた。侵害の訴えが最初にテキサス州東部地区において提起されていたので、請求の趣旨1から10は、first-to-file ruleに基づいて却下されたが、地方裁判所は、救済を認定可能な主張の陳述が欠如していたことを理由に、請求の趣旨11を却下し、また、請求の趣旨16については、テキサス州の訴訟において提起すべき反論であるとして却下したのである。
控訴審における争点は、請求の趣旨11及び16の却下に関するものだけであった。CAFCは、first-to-file ruleに基づき、これらの主張は両方ともテキサス州東部地区に属するものであると考え、地方裁判所を支持した。
CAFCは、2つの訴訟は十分に重複していると考え、また、そのような訴訟が別々の連邦地方裁判所に提起され、一方が侵害に関するものであり他方が確認による救済に関するものであった場合、もしも確認判決の申し立ての方が後から行われたのであれば、その申し立ては、一般的に、中断されるか却下されるか、または他方の裁判所へ移管されるべきであると判断した。これは抵触する判決を避けて裁判の効率性を促進するルールが存在するからである。
CAFCは、仮に請求の趣旨11が救済に関する主張を陳述していたとしても、ファーウェイの第三受益者の状態についてテキサス州の訴訟で審理にすることが、公正であり効率的であると判断した。
CAFCは、first-to-file ruleの例外を判断しなかった。というのも、裁判所または訴訟当事者の経済的利益のためには、後から提起された確認判決の申し立てにおいて請求の趣旨11を審理することを許容する方が好都合であるということを、ファーウェイが示さなかったからである。
この結論は、ファーウェイがテキサス州の企業であってビジネス上の主要拠点もテキサス州にあるという事実によって、補強される。
CAFCは、申し立てに係る第三受益者の争点を侵害及び有効性の争点から分離することは、効率性の目的に資することがないと判断した。
CAFCは、スマートフォンテクノロジーがアカシア・リサーチの分身として活動しているとする確認判決を求めていた請求の趣旨16についても、同じ結論に至った。このカウントも、ファーウェイに有利な非侵害の防御に直接的に関係しており、CAFCは、このカウントをカリフォルニア州における単独の訴えとして審理することは無意味であると判断した。
請求の趣旨11及び16が共にfirst-to-file ruleに基づいて適正に却下されたので、CAFCは、ファーウェイによる訴状を訂正する申し立て、及び裁判管轄の確定を支援するための追加的な開示手続の要求を取り扱う必要は無いと判断した。
CAFCは、first-to-file ruleに基づいて請求の趣旨16の却下を支持したが、この結論は、請求の趣旨16がテキサス州の訴訟における必須の反論であるとする地方裁判所の結論によって間接的に支持されると判示した。
フューチャーウェイ判決は、裁判のfirst-to-file ruleの適用に関する好例を提供するものである。このルールの下では、CAFCは、特別な考慮事項が存在しなければ、非侵害、無効、または関連子会社の争点に関する確認判決を求めて侵害被疑者が別の裁判所で2番目の訴訟を遂行することを許容しないと思われる。
もしもそれがふさわしいのであれば、侵害被疑者が侵害訴訟の裁判管轄をより好都合な裁判所へ移管することが依然として可能となる。
Key Point?この判決は、訴訟のfirst-to-file ruleの適用に関する好例を提供する。このルールの下では、特別な考慮事項が無い限り、非侵害、無効、または関連子会社の争点に関する確認判決を求めて侵害被疑者が別の裁判所で2番目の訴訟を起こすことはできないと思われる。