CAFC判決

CAFC判決

Fujitsu Ltd. Et al. 対 Netgear Inc.事件

No. 2010-1045,2010,12,20-Sep-10

業界標準と立証責任,この事件においてCAFCは、地方裁判所が侵害認定において業界標準を利用することを認めました。これにより、業界標準の基本的特徴を保護する特許を所有する特許権者にとって、特許訴訟を多少容易に進めることが可能になると思われます。特許権者は全てのクレームを侵害被疑品と比較する必要はなく、単純に、製品が特許によって保護された標準技術の基本的特徴を実施していることを理由に侵害している、という事実に頼ればよいことになります。この判決は、業界標準に基づく製品を製造する会社にライセンス料を要求する際に、より影響力を持つという点で、特許権者のライセンスグループにとっても好ましいものです。

業界標準と立証責任

CAFCは、直接侵害の十分な証拠が提示されていた4つの製品を除く他の全ての製品に関し、ウィスコンシン州西部地方裁判所による特許非侵害の略式判決を支持した。4つの製品に関しては、重要事実に関する争点の審理のために、地裁判決を破棄し、事件を差し戻した。

この事件は元々、特許クレームの間接侵害を扱っていた。間接侵害の争点は業界全体の相互運用性の基準との関連で非常に重要である。なぜならば、企業はしばしば、ある特有の動作が可能な製品を製造するが、それに関連する方法は、実際にはエンドユーザーによって実行されるからである。

この事件における個々の特許は、無線通信技術に関する異なる態様に関するものであり、ある特有の方法で細分化されたメッセージを無線で送信する方法をクレームしたものを含んでいた。

この業界における製品は、相互運用性を確保するために標準技術に準拠する。原告の三社(富士通、LGおよびフィリップス)は、争点の特許のライセンスプールの一員であり、業界標準の一部分に適合する製品は、クレームを侵害していると主張した。

地方裁判所は、原告は寄与侵害もしくは侵害誘因を立証しておらず、また原告は、個々の侵害被疑品の直接侵害の証拠を示さなければならないと判断し、被告のネットギア(Netgear)の主張を認めて特許非侵害の略式判決を下した。原告は判決および、地方裁判所のあるクレーム文言の解釈について控訴し、CAFCは地方裁判所の判決を初めから審理した。

控訴審においてCAFCは、2つの特許に関しては、全ての製品について特許非侵害の略式判決を支持した。また、もう一つ別の特許に関しては、4つの製品以外の全ての製品について特許非侵害の略式判決を支持し、現実の侵害を立証するための業界全体の標準技術の使用について審議の焦点を当てた。

間接侵害の立証のためには、特許権者は、直接侵害があったという事実の立証が最も重要であり、その他にもいくつかの要素を立証しなければならない。

CAFCは、もし装置が標準技術を実施していたとしても、特許権者は必ずその特定の装置の動作が侵害の証拠の一部となるような分析をしなければならない、というネットギアの主張を拒絶した。

その代わりに、もし裁判所がクレームを解釈して標準技術の実施を特許がカバーしていると判断するならば、標準技術に準拠していることを示すことは侵害を立証するに十分である。そのような侵害分析において、地方裁判所は業界標準に頼ることが可能である、とCAFCは判示した。

CAFCは、侵害を判断するために、クレームと侵害被疑品とを比較しなければならないという点に同意したが、もし侵害被疑品が標準技術に従って動作するならば、クレームとその基準とを比較することは、クレームと侵害被疑品とを比較することと同じであると説明した。

すると侵害被疑者はクレームが標準技術の全ての実施をカバーしていないこと、もしくは、クレームが標準技術を実施しないことを立証しなければならない。CAFCは、もし標準技術が詳細ではないか、またはオプション部分がある場合は、実際の侵害被疑品の分析が必要になることを確認した。

CAFCは原告の主張を分析し、争点の特徴は標準技術の中ではオプショナルであり、初期設定ではオフになっていたことから、原告は顧客が実際に特許侵害の特徴を使用した証拠を提示する必要がある、と結論付けた。この点について、CAFCは、4つの製品に関して、実際の侵害の証拠が1つだけあると認定した。

業界標準の使用の議論に加えて、CAFCは更に間接侵害の証拠となりうる他の要素の分析も行った。実際の侵害使用は4つの製品に関して示されただけであることから、間接侵害についても同様にそれら4つの製品にだけ潜在的に該当する。

しかしながら、間接侵害について、原告は、侵害被疑者が特許の知識を持ち、コンポーネントには実質的な非侵害の用途がなく、コンポーネントが発明の重要部分である、ということを立証しなければならない。

これらの3つの要素について、CAFCは全体的に原告の見解に同意し、問題となっている特定のツールが、それよりも大きな製品から独立した明確な特徴がある場合に、製品を全体として分析するよりもその問題のツールだけを考慮しなければならないとして、実質的な非侵害の用途はないと判示した。更に、争われた特徴部分は、クレームされた細分化工程を実施するという、争点の4つの製品を含む発明の重要部分であったとも。

最後に、CAFCは、間接侵害の心理要素を分析し、全ての事実を特許権者にとって最も望ましい形で解釈すると、略式判決を排除する重要事実に関する真正な争点があることを見出した。

こうして、CAFCは、侵害の立証に業界標準を利用することを認めて、概ね原告側の主張を認めた。しかしながら、争点の特徴が標準技術の中でオプショナルなものであったため、実際の直接侵害の証拠を示さなければならないとし、直接侵害は4つの製品だけに認めた。

したがって、原告の主張の大半を採用したにもかかわらず、CAFCは重要事実に関する真正な争点が残っている4つの製品を除く他の全ての製品に関し、地裁による非侵害の判決を支持し、4つの製品に関しては判決を破棄して、審理を地方裁判所に差し戻した。

Key Point?この事件のCAFCの判示において、地方裁判所が侵害認定において業界標準を利用することを認めたことにより、業界標準の基本的特徴をカバーする特許を所有する特許権者にとって、特許訴訟を多少容易に進めることが可能になると思われる。特許権者は全てのクレームを侵害被疑品と比較する必要はなく、単純に、製品が特許によってカバーされた標準技術の基本的特徴を実施していることを理由に侵害している、という事実に頼ればよいことになる。