被告のライセンス慣行が反トラスト法に違反するとして地裁の差止命令が出されたものの、控訴裁により破棄された事例。地裁は被告の市場支配力を認めたが、控訴裁は、被告の行為は関連市場の競争を失わせるものではないと認定し、地裁の差止命令を破棄した。
クアルコムのライセンス慣行が反トラスト法に違反するとして地裁の差止命令が出されたものの、控訴裁により破棄された事例
連邦取引委員会(FTC)は2017年1月、Qualcommに対し、同社のライセンス慣行が反競争的であるとしてカリフォルニア北部地区連邦地裁に提訴した。FTCは、①端末メーカーに対しQualcommのSEPライセンスを取得しない限りモデムチップを販売しない方針であること、②競合先に対しSEPライセンスの許諾を拒否したこと、③Appleと排他的取引協定を締結したこと―を問題とした。連邦地裁は、CDMAモデムチップ市場で支配的なシェアをもち競合者の市場参入の障壁となっていること、LTEモデムチップ市場でも独占的な価格を長期間にわたり維持していたため競合者が生産量を増加できず価格競争が生じなかったこと、などが立証されたとしてQualcommの市場支配力を認め、Qualcommに対し差止命令を下した。Qualcommが第9巡回控訴裁に上訴。Appleが地裁判決の停止を求めるモーションを提出し、控訴裁はそれを認め、本案についての控訴裁判決まで差止命令の執行を停止するよう命じた(2019年8月)。
控訴裁は、Qualcommの特許ライセンス料や「ノーチップ・ノーライセンス」の方針のいずれもモデムチップ販売の課徴金にはあたらず、関連市場の競争を失わせるものではないと認定し、Appleとの契約はCDMAモデムチップの競争阻害効果をもたらしていないとして、地裁の差止命令を破棄した。