CAFC判決

CAFC判決

FOX NEWS NETWORK, LLC対TVEYES, INC. 事件

2d. Cir., No.15-3885,2018,4,27-Feb-18

第2巡回区控訴裁判所はこの判決で、検索されたビデオクリップを視聴させる機能が米国著作権法上のフェアユースに当たるか否かについて、4つのフェアユースファクターを検討した結果、この具体的事例に関してはフェアユースにあたらないと判示した。この判決は、フェアユース原則の将来の適用にかなりの影響を有つと思われる。特に、ファクターの1つである、著作物の潜在的市場に対して使用が与える影響が、フェアユースの分析において相当の重みを持っていることが明確になった。

検索されたビデオクリップを視聴させる機能が米国著作権法上のフェアユースに当たらないと判断した控訴裁判決

米国第2巡回区控訴裁判所(所在地:ニューヨーク)はこの判決で、Fox News Networkの番組コンテンツを、TVEyesが複製、格納、及び再配布する行為は、米国著作権法(17USC)107条が規定するフェアユース原則により保護されないと判断し、ニューヨーク州南部地区連邦地裁の判決を覆した。この判断にあたり、控訴裁判所は4つの法定フェアユースファクターを分析し、その使用の目的及び特性が十分に変容的(トランスフォーマティブ: transformative)かどうかを評価する第1のファクターが、わずかにTVEyesを支持すると判断した。しかしながら、第3のファクター(侵害されたコンテンツの量及び重要性)及び第4のファクター(使用が著作物の潜在的市場価値に及ぼす影響)の双方が明確にFox Newsに有利に評価され、第1のファクターに勝るとされた。

TVEyesは、Fox Newsを含む1400以上のテレビ及びラジオチャンネルのオーディオビジュアルコンテンツを継続的に記録しているメディア企業である。TVEyesはこれらのコンテンツをテキスト検索可能なデータベースにインポートしており、課金したユーザはこのデータベースからキーワード、日付、及び時刻によって、10分間までの長さのクリップを特定し及び視聴することができる。ユーザは、無制限の数のクリップを、視聴し、アーカイブし、ダウンロードし、及び他の人に電子メールで送信することができる。TVEyesとの契約はビジネス及び専門家による使用のために開かれており、個人的な使用をする者には提供されていない。Fox Newsは、TVEyesがコピーされたFoxのオーディオビジュアルコンテンツを再配布し、TVEyesの顧客がFoxの許可なしにこれらのコンテンツにアクセスできるようにしたことにより、Foxの著作権を侵害したとして、TVEyesをニューヨーク州南部地区連邦地裁に提訴した。

ニューヨーク州南部地区連邦地裁は、TVEyesのサービスのいくつかの機能はフェアユースにあたると判断した。地裁は、TVEyesのユーザが、用語によりビデオを検索し(「検索機能」)、これらのクリップを視聴し(「視聴機能」)、及びこれらをアーカイブすることを可能にする機能は、フェアユースにあたると判断した。しかしながら、ユーザがビデオを自身のコンピュータにダウンロードしたり、ビデオを他人に電子メールで送信したり、日付、時刻、及びチャンネルによりビデオを検索した後にビデオを視聴したりすることを可能にするような、いつくかの他の機能は、フェアユースにあたらないと判断した。裁判所は、TVEyesのサービスのうちこれらの側面を禁止した。Fox Newsは、視聴機能がフェアユースにあたるとした地裁の判断について控訴したが、検索機能がフェアユースにあたるとした地裁の判断は争わなかった。

フェアユースは、限定された状況において他者の著作物を使用することを認める、著作権侵害に対する積極的抗弁である。これには、以下4つの排他的ではないファクターを考慮した、事案ごとの判断がなされる。(1)「使用が商業的なものであるか非営利の教育目的であるかを含む、使用の目的及び特徴」(2)「著作物の性質」(3)「著作物全体に対する、使用された部分の量及び重要性」(4)「著作物の潜在的市場又は価値に対して、使用が与える影響」Dennis G. Jacobs判事による判決において、第2巡回区控訴裁判所は、米国著作権法107条の下での4つのフェアユースファクターのそれぞれについて、TVEyesのサービスのうち視聴機能への適用について言及した。

第1のファクターは、使用の目的及び特徴を扱い、特に問題となっている使用が「変容的(transformative)」かどうかが評価される。「変容的」とは、その使用により何か新しく元のコンテンツとは異なるものを伝達している、又は他の方法でその有用性を拡大している、という意味である。裁判所は、視聴機能が「少なくともある程度変容的」であると判断するにあたって、Authors Guild対Google, Inc.事件(“Google Books事件”)における自身の以前の判決(804 F.3d 202 (2d. Cir. 2015))、及びSony Corporation of America対Universal City Studios, Inc.事件(“Sony事件”)における米国最高裁判決(464 U.S. 417 (1984))に依拠した。Google Books事件において、裁判所は、Googleが本のデジタルコピーをテキスト検索可能なデータベースに編集し、ユーザが検索された用語を含む「3行の抜粋」へのアクセスを可能にしたことについて、基本的な変容的なものである検索機能に対して重要な価値を付加していることを理由として、フェアユースにあたると判断した。今回のケースにおいて裁判所は、「ユーザの興味及び要求に応じた資料を特定することを可能にする」ことを理由として、視聴機能はGoogleの検索に類似すると判断した。Sony事件において、最高裁は、テレビの顧客が番組を後で視聴するために録画することは、必ずしも著作権の侵害にあたるわけではないと判断した。第2巡回区控訴裁判所は、TVEyesのユーザが都合の良い後の時点で番組を視聴することを可能にするという点で、視聴機能も同様に「効率を向上させた」と判断した。しかしながら、視聴機能は元の形態から「実質的に変わっていない」形態でコンテンツを再公開していることから、裁判所はこの機能が「いくらか変容的な特徴を有しているにすぎない」と判断し、このファクターはTVEyesに「わずかに」有利であるにすぎないと評価される、と結論づけた。裁判所は、第2のファクターである著作物の性質は、「本件では重要な役割を持たない」と判断した。

裁判所は、第3のファクターである、著作物全体に対する使用された部分の量及び重要性は、明らかにFox Newsに有利に評価されると判断した。TVEyesのクリップは長さが制限されているが、Fox Newsの番組では平均的にいってニュースのうち特定のトピックに関する部分は10分間の長さに入っており、10分間の複製はこのようなFox Newsの番組コンテンツについての「広範囲にわたる」複製にあたると裁判所は判断した。裁判所は、Googleが、本のコンテンツの「意味のある開示」をユーザが見ることを妨げるように、抜粋に対する複数の制限を課していた点で、本件の複製はGoogle Books事件における複製とは区別されると判断した。

裁判所は最後に、第4のファクターである、著作物の潜在的市場又は価値に対して使用が与える影響もまた、明らかにFox Newsに有利に評価されると判断した。そのように判断するにあたり、裁判所は、TVEyesによるビジネスモデルの成功は、このようなサービスに対する需要及び費用を払う意向が存在することを示しており、TVEyesにとってFoxのコンテンツを再配布できることは明らかな価値を有することから、このようなコンテンツを提供する権利を得るためにFoxに費用を払う意図があるはずである、と判断した。そうしないことにより、TVEyesは「FoxからTVEyes又は類似の存在からのライセンス収入を奪った」のであり、正しくは著作権者のものである市場を不当に奪った、と判断された。これらのファクターを全体として評価することにより、裁判所は、第1のファクターはわずかにTVEyesのフェアユースとして有利に評価されるものの、第3及び第4のファクターは明確にFox Newsに有利に評価されると判断した。

個の補足意見において、指名により同席したニューヨーク州南部地区のLewis A. Kaplan上席判事は、視聴機能を「いくらか変容的」とした多数意見の判断を批判した。Kaplan判事は、視聴機能は全く変容的ではないとの疑念を表明し、残りのファクターがフェアユースの分析において大きかったことを踏まえれば、多数意見が視聴機能の変容的な性質に言及する必要は全くなかったと述べた。

Fox News事件の判決は、フェアユース原則の将来の適用にかなりの影響を有するだろう。特に、判決は、第4のファクターである、著作物の潜在的市場に対して使用が与える影響が、フェアユースの分析において相当の重みを持っていることを明確にした。つまり、第2巡回区控訴裁判所は、使用が「いくらか変容的」であったとしても、その使用が著作物の価値を損ない、又は著作権者の潜在的な市場に影響を与えるのであれば、著作権者が必ずしもそのコンテンツを侵害者と同じ方法で又は同じ市場で使用するわけではない場合ですら、フェアユースにはあたらないと判断した。

情報元:

Michael P. Sandonato

Brian L. Klock

Venable LLP