CAFC判決

CAFC判決

Festo Corp. 対 Shoketsu Kinzoku Kogyo Kabushiki Co., Ltd.事件

Nos. 2005-1492, 2007 WL 1932269,2007,10,July 5, 2007 (Festo XIII)

Festo事件において、CAFCは、関連する従来技術において開示された全ての均等物は予見可能性があると判示しました。従って、出願人はクレームを補正するときに慎重に考えなければなりません。出願人がクレームを補正すれば、多くの場合、発明の均等論に係る技術的範囲を狭めることになり、本来は均等であると言える均等物を特許権の範囲から除外することになるからです。

審査過程における補正が及ぼす均等論の適用への影響

フェスト(Festo)事件において、CAFCは、関連する従来技術における全ての均等物はクレームの補正時に予見可能であり、従って均等論の下で特許発明の保護範囲は制限されるとの見解を維持した。

原告のフェスト社は、シリンダの内部に設けられ、シリンダ内を移動するピストンを有する装置に係る、米国特許番号第4,354,125号(以下、125特許)を保有している。

ピストンにはマグネットが入っており、このマグネットはシリンダの外部に設けられたスリーブ上のマグネットと相互作用する。ピストンがシリンダ内を移動すると、磁力によってスリーブが引きつけられる。

125特許は磁化可能なスリーブをクレームしているが、被告焼結金属工業株式会社(現SMC株式会社。以下、ショーケツ)が訴えられた装置は、磁化可能ではないアルミニウムのスリーブを使用している。従って、この事件の主要な争点は、ショーケツの装置は均等論の下で125特許を侵害したかということであった。

均等論とは、訴えられた装置または処理が、特許クレームの文言の範囲には含まれないが、クレームされた発明の均等物である場合に、当事者に特許侵害の責めを負わせることができる法論理をいう。

特定の状況では、審査経過禁反言によって均等論の適用を制限することができ、特許クレームの技術的範囲が、審査の過程で、例えば、クレームの補正によって除外された、公知の均等の事項にまで拡張されることを妨げることができる。

補正の時に公知でなかった、または、予見可能性のなかった均等の事項を除外することはできず、従って、これらの事項に対して均等論の下で特許権の効力を及ぼすことができる。

結果として、出願人が補正によってクレーム要素を狭め、または、制限すると、包袋禁反言によって、狭められたクレーム要素の技術的範囲を、補正の時に公知であった、または、予見可能性のあった均等の事項にまで拡張することはできない。

本事件のように、均等論の下での侵害が争点の場合、当事者は、補正の時に均等物が公知であった、または、予見可能性があったか否かをしばしば争う。

125特許のクレームは磁化可能なスリーブを要件としていたため、ショーケツの磁化可能でないアルミニウムのスリーブは、125特許の文言侵害を構成しなかった。このため、CAFCは、ショーケツの磁化可能でないアルミニウムのスリーブは均等論の下で125特許を侵害したか、並びに、審査経過禁反言によって125特許のクレームが制限されるかを審理した。

ここで、出願人は、審査経過において125特許のクレーム1を補正して、スリーブが磁化可能な材料でできていることが要件となるようにした。出願人によれば、磁化可能なスリーブは磁場の漏出に対するシールドとして作用する。

この補正は特許性に関係すると認定されたため、過去のフェスト判決の規範に基づいて、審査経過禁反言が適用されるとCAFCは認定した。従って、磁化可能なスリーブが要件となるように125特許のクレーム1を補正したことによって、出願人は予見可能な均等のスリーブを除外したのである。

この事件の主要な争点は、磁化可能でない均等のスリーブが、補正の時に、公知または予見可能だったかということである。フェストは、そのようなスリーブが磁力をシールドする作用を奏することは公知でなかったため、ショーケツの磁化可能でないアルミニウムのスリーブは、補正の時に予見可能ではなかったと主張した。

CAFCは、これを認めず、均等物は、関連する従来技術において開示されたときに予見可能であるとの見解を維持した。ショーケツの訴えられた装置の中に見られたような、磁化可能でないスリーブは従来技術において公知だった。

このため、CAFCは、審査経過禁反言を適用し、均等論の主張により125特許の効力が磁化可能でないスリーブまで及ぶことを阻止した。

フェスト事件において、CAFCは、関連する従来技術において開示された全ての均等物は予見可能性があると判示した。従って、出願人はクレームを補正するときに慎重に考えるべきである。

出願人がクレームを補正する場合、出願人は、発明の均等論に係る技術的範囲を狭めることになるかもしれないし、関連する従来技術において知られていた全ての均等物を除外することになるかもしれないからである。